建物明渡請求の流れ9(送達)
前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。
建物明渡し手続の流れの確認
①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行
今回は「⑤建物明渡訴訟」の話の3回目になります。
被告(相手方)が郵便物を受け取らない場合
建物明渡しの手続に限った話ではありませんが、相手方が故意に郵便物を受領しない場合は少なくありません。
建物明渡訴訟のケースであれば、訴訟提起前に催告や解除通知を内容証明郵便で行う場合、訴訟提起後であれば裁判所から訴状等を送達する場合などです。
そこで、今回はそのようなときの流れや対処方法などについて、訴訟提起の前後に分けてお話していきます。
訴訟提起前
そもそも催告や解除の意思表示は口頭でも構いませんし、必ずしも内容証明郵便(配達証明付き。以下同じ。)で行う必要はありません。ただ実際のところは、その後の訴訟等で水掛け論にならないよう、内容証明郵便で行い客観的な証拠を残すのが通常です。
内容証明郵便は、相手方が不在であったり受領拒否をしたために配達できなかった場合、一定期間、郵便局に保管(留置)され、その期間(=「留置期間」と言います。)経過後に差出人に返還されてしまいます。
つまり、通常の書留と同様、不在連絡票を見た相手方が再配達を依頼したり郵便局に受領に行かない限り、相手方にその郵便物は届きません。もちろん郵便物の内容を知ることもありません。
判例の態度
しかし、郵便物を受領しなければ賃貸借契約を解除されないのでは理不尽であることは言うまでもありません。
そこで、判例は、このように相手方が内容証明郵便を受取らずに「不在(ないし留置期間経過)」を理由に差出人に返送された場合には、「留置期間の満了した時点で、(内容証明郵便に記載された意思表示は)相手方に到達した。」と判断しました(最判平成10年6月11日参照)。
しかし、この判例は結論だけ見ると画期的な判例に思えますが、不在連絡票の表示その他の事情から内容証明郵便の内容を推測可能であった、受領の意思があればさしたる労力や困難を伴うことなく受領することができた、などの特別の事情がある事案についての判断ですので、これをそのまま他の事例に当てはめることができるかは難しいところです。
特定記録郵便を使う
そこで、1つの方法として、内容証明郵便の後にまたは同時に「特定記録郵便」によって解除の意思表示を行う方法があります。
特定記録郵便は、郵便局で郵便物を引き受けた記録として受領証が発行されます。また、配達の際は、受取人の郵便受けに配達するので、不在により配達ができないということがありません。さらに、郵便局の追跡サービスを利用すればインターネット上で配達状況を確認することもできます。
そのため、出しっぱなしの普通郵便と異なり、裁判で利用するための証拠書類を手元に残すことができるのです。
訴状による解除の意思表示
特定記録郵便は、郵便受けに投函するので、書留のように受取人の押印又は署名は求めません。そのため、受け取った受け取ってないの水掛け論がないとは限りません。
そこで、特定記録郵便で解除の意思表示を行う場合は、さらに念のため、訴状によって解除する旨の意思表示も合わせて主張しておくのが無難です。
具体的には、訴状の記載の中で、まず「解除の意思表示は、特定記録郵便によって遅くとも平成28年〇月〇日には到達した。」旨を主張し、それに続けて「仮に被告が当該特定記録郵便を受領していないとしても、本訴状をもって解除の意思表示をする。」旨を主張します。
このようにすることにより、最悪でもその訴状が相手方(被告)に送達されたときに、解除の意思表示も到達したことになるのです。
訴訟提起後
訴訟を提起し第1回目の裁判期日が決まると、裁判所は訴状(副本)を被告に送達します。
裁判所が被告に訴状を送付する際には「特別送達」という方法で行います。
特別送達も書留の一種の方法なので、被告が不在であったり受領拒否をすると、留置期間経過後に裁判所に返戻されてしまいます。
しかしながら、裁判所からの郵便物は受領拒否しても無駄です。
多少の時間かせぎにはなるかもしれませんが、郵便物を受領しなければ裁判が進まないのではどうしようもないので、最終的には必ず訴状を送達する方法が民事訴訟法の規定にあります(ここでは詳細は割愛します。)。
ただし、訴状の送達が完了するまでの過程において、被告の就業場所を調べたり被告の住所地の現地調査をしたりする必要が出てくる場合もあります。そのため、被告が裁判所からの郵便物をすぐに受領した場合に比べ、原告には余計な時間や費用がかかってしまうことはあります。
(補足)被告(相手方)が行方不明の場合
今まで述べてきたのは、被告(相手方)が不在であったり受領拒否をして郵便物を受領しない場合の話です。
被告が行方不明のため、そもそも郵便物を送付できない場合は「公示送達」を利用して訴訟を進めていきます。
公示送達の場合の訴訟の進め方はコラム「被告が行方不明の場合の訴訟手続」を参照してください。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。
少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。
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以 上
合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。