遠方の専門家に手続を依頼すること

 今回は、遠方の専門家に対し手続を依頼することの良し悪しについて、お話ししていきたいと思います。

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 司法書士 佐藤俊傑

はじめに

 以前、遠方(関西圏)から「強制執行(不動産の強制競売)の申立てを依頼することが出来るか」との相談を受けたことがありました。

 その相談者の方は、地元の弁護士に訴訟代理を依頼したけれども、報酬等の費用があまりに高額だったため、強制執行については別の専門家に頼もうと考え、インターネットで検索したうえで当事務所に電話をしたとのことでした。なお、債務者が所有する不動産は関東圏にあるとのことでした。

遠方の司法書士に依頼できること

 現在では、インターネットで全国の司法書士や弁護士の事務所ホームページを閲覧できるので、依頼したい分野ごとに専門家を探して詳細な情報を得ることができるようになりました。

 ただ、実際にこの方が良いと思っても、遠方の専門家に依頼することは一抹の不安があるのではないでしょうか?そこで、主な手続ごとに、遠方の司法書士に依頼する場合であっても問題がないかを見ていきたいと思います。

民事訴訟(少額訴訟を含む)

 司法書士に訴訟代理を依頼した場合、裁判所まで出頭するための旅費や日当がかかる場合があります。旅費日当は、裁判所までの距離や労働時間によって変動します。
 また、裁判所の管轄は、訴訟の内容にもよりますが、例えば、一般的な金銭請求であれば依頼者(=原告)の方の住所地を管轄する裁判所で裁判が可能です。

 以上からすると、訴訟がどのくらい継続するか(裁判所に何回出頭するか)にもよりますが、訴訟で請求する額(=訴額)と旅費日当額とのバランスを考えると、遠方の司法書士に依頼するメリットは低くなりがちと思われます。

 裁判所勤務時代、茨城県内の裁判所まで、裁判期日のたびに九州から出頭してくる代理人弁護士がいました。なぜその弁護士に依頼したのか、報酬体系はどうなっているのかなどは知る由もありませんが、普通に計算すれば旅費日当だけでも相当な額になっていたのではないでしょうか。

 なお、司法書士は、訴状等の書類作成のみの依頼も積極的に受け付けています。訴状等の申立て書類を司法書士に作成してもらい、実際の裁判には自分が出頭して手続を進めます。この場合であれば、当然のことながら遠距離の司法書士でもあまり関係ありません。
 書面審査のみで手続が進む支払督促の申立てなども同様に考えることができます。

強制執行

 不動産競売や債権執行などの強制執行手続は、遠方の司法書士でも全く問題ありません。

 少額訴訟債権執行を除き、地方裁判所で手続をおこなう不動産競売手続や債権執行手続については、司法書士はそもそも代理人にはなれません。それらの申立て書類の作成業務を受任することになります。

 しかしながら、前述の民事訴訟と異なり、これら強制執行手続は、原則として書面審理によって淡々と手続が進んで行きますので、依頼者本人も受任司法書士も裁判所に出頭することは通常ありません。そのため、司法書士が代理人でないことによる影響も通常ありません。

 なお、強制執行手続の中で、裁判所から発送した債務者宛ての郵便物が届かない場合、債務者の居住地の現地調査等が必要になる場合もありますので、ケースによってはそういう観点から依頼先を検討することが必要かもしれません。

 いずれにせよ、強制執行については、訴訟と比較してあまり詳しくない司法書士や弁護士が少なくありません。ある意味、この点が依頼先を検討するにあたりもっとも注意すべき点ではないでしょうか。

債務整理

 破産手続や個人再生手続は、原則として申立人の住所地を管轄する地方裁判所に申立てをします。そして、破産手続が管財事件とされた場合の破産管財人や個人再生手続の個人再生委員などは、基本的に申立てをした裁判所と同地域の弁護士が選任されることになります。

 手続開始後の再生委員等との打合せなどには司法書士も通常出頭しますので、そういった点からすると、あまりに遠方の司法書士に依頼することは旅費日当などが余計にかかることになります。
 ただし、破産手続の中でも同時廃止事件の場合であれば、破産管財人が選任されることはないので、遠方の司法書士に破産申立書を作成してもらい、自分が裁判所に出頭することで十分対応が可能でしょう。
 破産手続の中で行われる審尋手続は、たとえ代理人を付けていたとしても原則破産者本人が出頭する必要がある手続になります。

 私の裁判所勤務時代の経験でも、茨城県内の裁判所において、東京や千葉、埼玉、横浜あたりの司法書士や弁護士が関与した同時廃止の破産申立ては多数ありました。そして、そのことにより不利益が生じることは全くありませんでした。

遠方からの依頼を受任するための条件

 遠方からのご依頼を受けるために必要な条件としては、やはりインターネットを利用できる環境にあることが必須です。
 打ち合わせをするにあたり、直接面前で話ができれば一番ですが、何度も来所が難しい場合など、電話のやり取りだけではどうしても限界があります。

 インターネットと言っても難しいPC操作のことではなく、メールでのやり取りに加え写真やPDFデータの送受信ができれば十分です。 

(補足)遠方にある不動産の相続登記の依頼

 亡くなった方(=被相続人)が全国各地に不動産を所有していた場合、遠方の不動産も含めて一人の司法書士に一括して相続登記手続の依頼をすることは全く問題がありません。

オンライン申請による相続登記

 不動産登記の申請は、管轄法務局の窓口まで行って申請書を提出しても良いのですが、現在では、インターネットを利用した登記申請が可能になっています(=オンライン申請)。
 また、登記手続が完了した後に法務局が発行する登記完了証などの各種書類も、郵送にて送付してもらうことができるようになっています。

 その結果、一度も管轄法務局に出向くことなく登記手続をすることができるため、不動産の所在地と依頼する司法書士の事務所との距離は気にする必要がなくなりました。

 なお、オンライン申請は全ての司法書士事務所で行っている訳ではありません。当事務所は対応しておりますが、事務所ごとに異なりますので注意が必要です。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 当事務所では、訴訟(少額訴訟)、調停、支払督促など裁判所の手続全般の書類作成や訴訟代理業務など、広くお手伝いをすることができます。
 また、当事務所では、訴訟手続のみではなく、各種保全手続や執行手続のご相談、書類作成等も承っております。

 少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。

以 上

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