建物明渡しの強制執行2(債務者の範囲)
今回は、建物明渡しの強制執行における「債務者の範囲」の話です。建物明渡しの強制執行1(執行の準備)からご覧いただけたら幸いです。
建物明渡しの強制執行の方法
建物明渡しの強制執行は、執行官が、債務者の目的建物に対する占有を解いて、債権者にその占有を取得させる方法により行います(民執法168条1項)。
もう少し具体的に言うと、建物明渡しの強制執行とは、執行官が目的建物の占有者について調査をし、債務名義上の債務者の占有を認定した場合は、その債務者の占有を解き(人の退去及び物の撤去)、債権者に当該建物の完全な支配を移すことです。
占有者の認定
前述の強制執行の定義からわかるとおり、建物明渡しの強制執行を行うためには、債務名義上の債務者(執行文に記載された債務者)と目的建物の占有者とが一致しなければなりません。
通常のケースであれば、裁判で被告となった者がそのまま判決等の債務名義上の債務者であり、強制執行の相手方となるはずですので、その者が占有しているかを調査する必要があります。
具体的には、執行官は、建物の表札や郵便受けの表示、債務者の住民票、ライフラインの契約名義等様々な要素から総合的に占有者を判断します。
そして、執行官は、債務者が占有する限度でそれを排除し、債権者にその占有を取得させることになります。
債務者の家族や使用人などがいる場合
目的建物について、債務者の占有は認定できたとして、同居する家族や使用人などがいる場合はどうでしょうか?債務者に対する債務名義のみで退去させることができるでしょうか?
この場合、これらの者が債務者の「占有補助者」と認められれば、同時に退去させることができます。
「占有補助者」とは、占有者の指示に従い、あたかもその手足となって目的建物を使用するにとどまり、独立の占有が認められない者を言います。
債務者と一定の身分関係がある場合や雇用関係がある場合などは、通常は占有補助者と認められることが多いと思われます。例えば、債務者と同居する家族や、営業用建物において債務者が営業主の場合の従業員などです。
ただ、占有補助者であるかも執行官の総合的な判断によりますので、前述のような関係にある者であっても、独自の権原によって独立した占有を認められ、この者に対する別の債務名義がなければ強制執行をすることができない場合もあり得るところです。
債務者と他人が共同占有している場合
債務者Aに対する強制執行の申立てをしたところ、実際にはAと第三者Bが共同で建物を使用していたという場合の話です。
先に述べたところですでに答えは出ていると思われますが、Bが独立した占有権原を有する場合には、両名に対して強制執行をするためにはBに対する債務名義も必要になってきます。
(補足)建物の一部の占有の排除
今まで述べたところと似て非なる問題として、建物の一部のみの占有を認定できるのか、その一部のみの明渡し執行ができるのかという問題があります。
例えば、一軒家の1階は債務者Aと第三者Bが共同使用し、2階はAのみが単独使用している場合、2階部分のみの強制執行ができるのかという問題です。
結論だけ述べると、その一部分が物理的に分離しており、かつ独立して使用できるのであれば、同部分のみの明渡し執行が可能ということになります。要件等の詳細については、また別の機会にお話しさせていただきます。
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以 上
コラム「建物明渡しの強制執行3(申立て)」はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。