建物明渡請求の流れ8(訴状・証拠)

 前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。

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司法書士 佐藤俊傑

建物明渡し手続の流れの確認

①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行

 今回は「⑤建物明渡訴訟」の話の2回目になります。

建物明渡訴訟の提起

1郵便切手・申立手数料」、「2申立て先(管轄)」、「3訴訟にかかる期間」については、前回のコラムその7をご覧ください。

1 訴状の記載

 本コラムは、訴状の記載方法等を逐一紹介することは目的としていません。最高裁判所のホームページ内に「建物明渡請求」の訴状(書式と記載例)が有りますので、必要な方は参考にしてください。
 ただし、この書式において注意すべきは、前提としている事例が非常に単純なものであることと、訴状の記載として必要最低限のものだけが書かれていることです。

 建物明渡訴訟においては、賃貸借契約の内容や解除の理由は様々ですので、自己の具体的ケースに基づいて記載を補充ないし変更しなければなりません。

 記載の仕方が具体的内容に及ぶ場合は、裁判所の窓口では相談に応じてくれませんので(この点は、コラム「裁判所の窓口相談について」を参照。)、自分自身でどうしても分からない場合は、司法書士等の専門家に相談することをお勧めします。

2 添付書類(付属書類)

 訴訟を提起する場合は、訴状の他にいくつかの添付書類が必要になります。これは「証拠書類(=書証)」とは厳密には別のものです。

 証拠書類は、裁判所に提出するだけではなく、被告にもその内容を了知させる必要があるので、同じ書類を2部提出する必要があります(裁判所分と被告分の計2部提出する)。
 一方で、添付書類は裁判所分として1部提出すれば足ります。

⑴不動産登記事項証明書(不動産登記簿謄本)

 建物明渡訴訟などの「不動産に関する訴訟」では必ず提出する書類になります(民訴規55条1項1号)。原本を提出します。

 ただし、建物明渡訴訟において、不動産登記事項証明書は対象建物を特定するための基本中の基本書類のため、実務では、単なる「添付書類」ではなく「証拠書類(=書証)」の1つとして提出する例が多いです。
 なお、当然のことながら未登記物件の場合は登記簿がありませんので提出は不要です。

 登記事項証明書はなるべく新しい物を提出することになりますが(おおむね申立て前1~3か月以内に発行されたもの)、裁判所によっては一定の基準を設けていますので、あまりに古い物の場合は再取得した方が無難です。

⑵固定資産税評価証明書

 訴額及び手数料を計算するために必要ですので必ず提出します。原本を提出します。
 毎年4月1日付けで最新年度のものに切り替わりますので、最新の評価証明書を提出します。

⑶法人登記事項証明書(いわゆる資格証明書)

 当事者(原告又は被告)が法人の場合には必ず提出します(民訴規15条、18条)。これもなるべく新しいものを提出します。

 なお蛇足ですが、当事者(原告又は被告)双方が個人のときには、両者ともに住民票の提出は原則不要です。ただし、訴状等の送達場所の調査など、その後の訴訟の進行しだいで提出を求められる場合があります。

3 一般的な証拠書類

 建物明渡訴訟で提出される一般的な証拠書類は次のとおりです本コラムでは「その1」から、実務で多い「賃料不払い」を原因とする賃貸借契約の解除に基づく建物明渡訴訟を念頭に置いています。

 不動産登記事項証明書
 賃貸借契約書
 催告書(内容証明郵便)、配達証明書
 解除通知書(内容証明郵便)、配達証明書
 陳述書

 事例にもよりますが、一般的にはそれほど変わった書類はないことがわかると思います。

 通常は、賃貸借契約を締結して建物を借りているという事実は争いがないでしょうから、あとは賃料不払いを理由に適法に契約を解除したか否かという部分の証拠になります。

 陳述書とは、自分自身の言葉で今までの経緯をまとめた書面です。原告と被告の関係性や契約締結から解除に至るまでに起こった事実などを時系列に沿って解り易くまとめます。

 証拠書類はコピーを2部(裁判所用と被告用)提出します。原本は手元に置いておき、裁判当日に持参します。
 なお、証拠書類の証明力については、コラム「裁判にはどのような証拠を出せばよいですか?」が参考になりますので是非ご覧ください。

流山パーク司法書士事務所にご相談ください

 建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。

 当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。

 当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。

以 上

 建物明渡請求の流れ9はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。 

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