建物明渡請求の流れ7(訴訟提起)
前回までに引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。
建物明渡し手続の流れの確認
①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行
今回は「⑤建物明渡訴訟」の話になります。
以前にも述べたとおり、具体的な事案によって上記の手続で不要となるものや前後することもありますのでご了承ください
建物明渡訴訟の提起
1郵便切手・申立手数料
郵便切手や申立手数料の額については、その計算方法を含めて、コラム「訴訟にはどのくらい費用がかかるのか(前編)」、「同(後編)」にて詳細にご紹介していますので、そちらをご覧ください。
なお、事例としてはあまりないと思いますが、手数料算出の基準となる固定資産税評価額のない建物(未評価建物)の場合は、評価証明書に代えて管轄法務局が作成した「新築建物等価格認定基準表」を利用して建物価格を算出することになります。
2申立て先(管轄)
原則として、次の二つの基準により検討していきます。
①土地管轄(場所を基準とした管轄)
②事物管轄(訴額を基準とした管轄)
建物明渡訴訟などの「不動産に関する訴訟」には管轄に関する特例があります。
通常、訴額が140万円以下の訴訟は簡易裁判所が管轄するのが原則ですが、「不動産に関する訴訟」については、地方裁判所にも管轄が認められます(裁判所法33条1項1号、24条1号)。
例) 被告が松戸市内のアパートに居住しており、そこの明渡しを求める訴訟の場合
目的不動産の所在地=被告の住所地=いずれも松戸市のため、①により「千葉地方裁判所松戸支部」もしくは「松戸簡易裁判所」が管轄となります。
そして、②により、訴額から実際に申立てをする裁判所を決定します。訴額が140万円以下の場合は、申立て先を千葉地裁松戸支部にするか松戸簡裁にするかは自分で決めることになります。
実務では、アパートの一室の明渡しの場合は、コラム「訴訟にはどのくらい費用がかかるのか(後編)」で記載した計算方法のとおり、元々の評価額自体が相当程度小さくなるので、訴額が140万円以下になることも少なくありません。
そのため、訴訟内容の難易度や移送の可能性等を考慮して実際に申立てをする裁判所を選択する必要があります。
(※「移送」とは、当該訴訟を他の裁判所に移して、そちらの裁判所で審理をすることです。裁判所の裁量で移送される場合や、一定の要件のもと必要的に移送される場合があります。)。
3訴訟にかかる期間
概ね次のとおりですが、具体的事案によって非常に差があるところですので、ごくごく一般的な目安として考えてください。
1回の裁判で終わるとすれば、①→③→④となり、トータルで最短2か月程度の計算になりますが、実際のところは、訴状の補正や裁判所の繁忙による事務の停滞などもありますので、最短でも3か月くらいかかると思っておけばよいのではないでしょうか。
逆に、②のとおり裁判は1か月に1回程度のペースで開かれますので、相手方の主張や反論により裁判期日を重ねることになると、1か月単位で裁判にかかる期間は延びていくことになります。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。
当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。
以 上
建物明渡請求の流れ8はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。