建物明渡請求の流れ6(仮処分の執行)
前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。
建物明渡し手続の流れの確認
①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行
今回は、「④占有移転禁止の仮処分」の話の3回目になります。
占有移転禁止の仮処分の執行(保全執行)
占有移転禁止の仮処分は、裁判所から仮処分命令が出たら一件落着ではありません。当該仮処分命令を用いて、執行官に対し、保全執行の申立てをしなければなりません。
なお、不動産競売や債権差押えなどの執行手続はまとめて「強制執行」と呼ばれていますが、保全命令に基づいて行われる執行手続は「保全執行」と言います。
保全執行の申立て
1申立て先
目的物(=対象不動産)の所在地を管轄する地方裁判所に所属する執行官あて
回りくどい言い方ですが、各執行官は地方裁判所ごと(本庁及び支部ごと)に在籍していますので、対象不動産の所在地を管轄する地方裁判所(本庁又は支部)の執行官宛てに申立書を提出するということです。
各裁判所の中に「執行官室」という部屋がありますので、そこが受付窓口になります。
2申立て期間
これは非常に重要です。
保全執行は、「債権者」に保全命令の決定正本が送達されてから2週間以内に行う必要があります(民保法43条2項)。この期間を過ぎると、その保全命令によって保全執行はできません。
では、2週間以内にどこまで行っていれば良いかですが、占有移転禁止の仮処分の執行の場合には、この2週間以内に執行官が執行に着手していればよく、執行が完了するまでは必要ないとされています。
いずれにせよ、保全命令を受け取ったら、速やかに保全執行の申立てをする必要があります。
ところで、もう一方の当事者である「債務者」への決定正本の送達は、実務上、保全命令の発令後に一定期間が経過してから発送するか、もしくは債権者からの申立てに基づき、保全執行と同時に送達することが通常です。
これは、手続の密行性を維持して執行妨害を防ぐためであり、法律上も、保全命令が債務者へ送達される前であっても保全執行に着手できることが認められています(民事保全法43条3項)。
3費用
申立て時に、執行官手数料等の費用として3万円程度を予納します。これは債務者や物件の数によって増加することがあります。
この他に実費として、目的物件に立ち入るために合鍵等がなかった場合、解錠技術者の費用として数万円程度かかることがあります。金額は業者により異なります。
具体的な執行方法
占有移転禁止の仮処分として、一番典型的な「債務者に目的物の使用を許す場合」を例に述べていきます。
この場合の仮処分命令の主文は末尾記載のとおりですが、これに従って執行官が行うべきことは、
① 目的物に対する債務者の占有を排除し、執行官がこれを保管すること(ただし、債務者に目的物の使用を許すこと)
の2点です。
執行官は目的物件に臨場し、債務者に対し、以後、執行官が目的物を保管する旨を告げ仮処分の執行を行います。
ただし、債務者の使用が許されている場合に、一度目的物に対する債務者の占有を排除し、再びこれを債務者の使用を許すために引き渡すなどということは迂遠なだけですので、そのようなことはしません。
債務者の占有状況は外形的には何ら変化はなく、執行官の保管はあくまで観念的なものになります。
すなわち、実際に執行官が現場で行う保全執行の作業としては、目的物を執行官保管にする旨を告げ、公示書の貼り付けをするのみです。
なお、公示書を剥がす行為は刑罰に処せられることがあります。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。
少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。
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以 上
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