建物明渡請求の流れ3(調停の利用)
前回に引き続き、建物明渡請求の流れをご紹介していきたいと思います。
その1から順を追ってご覧いただければ幸いです。
建物明渡し手続の流れの確認
①催告・解除の意思表示 → ②任意の明渡し・即決和解 → ③民事調停 → ④占有移転禁止の仮処分 → ⑤建物明渡訴訟 → ⑥強制執行
今回は、「③民事調停」の部分の話になります。事案により手続が前後したり不要な手続があることは、以前述べたとおりです。
民事調停
任意の明渡し合意や即決和解が期待できないとき(できないことが予想されるとき)は、次にとるべき方法として、調停の申立てをするのか訴訟をするのかを検討することになります。
調停の使い方
調停のメリットは、すでに多くの方がご存知のところだと思います。
一般的には、①訴訟に比べて申立手数料が安い、②訴訟に比べて申立書の作成が容易、③話し合いの手続のため、訴訟提起をするときほど事を荒らげることがない、④話し合いによって柔軟な解決が可能となることなどが挙げられます。
デメリットについてもすでにご存知かと思いますが、話し合いの手続のため、相手方と合意しないと調停が成立しないということが挙げられます。
相手方(賃借人)が少しでも話し合いに乗ってくる様子があるのであれば、やはり調停をすることをお勧めしたいと思います。調停が成立すれば調停調書を作成しますが、これは訴訟における判決と同じく債務名義になるので、これに基づいて強制執行をすることが可能です。
ただ、実際のところは、訴訟で勝訴判決を得た場合よりも、お互い納得のうえで調停が成立した場合の方が、結果的に相手方が任意に建物の明渡し等の義務を履行する可能性は高いです。
そうすると、申立手数料だけを比べると、訴訟より調停の方が安いといっても訴訟の2分の1の額ですので、何十万円もの差が出るようなことは通常ありませんが(よくて数千円から数万円程度の範囲の差)、強制執行が必要か否かとなると、何十万円単位の差が出ることも十分にありえます。
そのため、例えば、「合意した日にちまでに明渡しを完了すれば、滞納家賃を免除する。」とか、「明渡しと滞納家賃〇〇円を支払えば、残りの滞納分と遅延損害金は免除する。」などの提案をすることにより、「トータルで得をする」ように、柔軟に解決できる調停制度を上手に利用することが重要です。
宅地建物調停
ところで、こういった賃料不払いによる明渡しなど、建物の賃貸借に関する紛争は、調停の中でも特に「宅地建物調停」という分類になります。
通常の調停(一般調停)とは、管轄、すなわち申立てをする簡易裁判所が異なります。
通常の調停の管轄は、相手方の住所等を管轄する簡易裁判所になりますが、宅地建物調停の管轄は、紛争になっている建物の所在地を管轄する簡易裁判所になります(民事調停法24条)。
ただ、多くの場合、相手方(賃借人)の住所地=建物所在地でしょうから、実際のところあまり問題になることはないでしょう。
そのほか、申立書の作成の仕方や調停期日の進め方は通常の調停と何ら変わりありませんので、当事者の方がやるべきことも通常の調停と同じです。
あえて言えば、裁判所が個別の事件を管理するときに利用する事件符号が変わるくらいでしょうか(一般調停は「ノ」、宅地建物調停は「ユ」)。
なお、宅地建物調停の中の1つに「賃料増額(減額)調停」というものがありますが、これについては多少注意すべき特則があります。ここでは関係がないので割愛しますが、興味のある方は民事調停法24条の2、同条の3をご覧になってみてください。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
建物明け渡しの手続は、時間も労力も非常にかかる手続です。任意の交渉から始まり、保全・訴訟・強制執行と様々な手続を駆使する必要もでてきます。
当事務所では、こういった裁判所に提出する書類の作成は勿論のこと、建物明け渡しという最終的な目的達成まで様々なお手伝いをすることができます。
少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。
以 上
建物明渡請求の流れ4はこちらからどうぞ。合わせて建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。