訴訟にかかる費用(後編)
前編に引き続き、訴訟にかかる費用の話をご紹介していきます。前提となる「訴額」などの言葉の意味については、まず前編をお読みいただければ幸いです。
(具体例)建物明渡訴訟のケース
建物の明渡しを求める訴訟は、前編でご紹介した貸金返還訴訟と同じく最もポピュラーな訴訟の一つです。
実務では、一軒家を丸々明渡せという訴訟は少なく、貸主(大家さん)が賃借人に対し、マンションやアパートの一室を明け渡せという訴訟が多いです。そして、明渡しを求める理由としては、賃料の滞納が圧倒的に多いと思います。
さて、建物明渡訴訟の訴額は、明け渡しを求める理由(賃料滞納など)にかかわらず、その建物の「固定資産税評価額」の2分の1の額となります。
ただし、アパートの一室の明渡しであれば、まず、建物全体の評価額から該当する貸室の占有面積分にあたる評価額を計算し、それに2分の1を掛けることになります。
例)アパート全体の床面積100㎡(固定資産税評価額500万円)
明渡しを求める貸室の占有面積は25㎡
① 500万 ÷ 100㎡ = 5万(1㎡あたりの評価額5万円)
以上から、訴額は62万5000円となり、ここから算出される申立手数料(収入印紙代)は7000円になります。
なお、建物明渡訴訟では、建物の明渡しを求めるのと同時に、未払賃料や賃貸借契約解除後の賃料相当損害金も請求することが多いと思います。
しかしながら、これらの金額は、「建物の明渡しと同時に請求する限り」、訴額を計算する際には考慮(合算)しません。これも前編で述べた「附帯請求の不算入」の原則に当たるからです。
不動産の評価額が低く、未払賃料等の合計額の方が高額になってしまう場合も同様です。建物の価格のみを基準に訴額を計算すれば足ります。
手数料は決して高くない
前編後編を通したここまでの説明で、訴訟を起こす場合の手数料等(収入印紙代と郵便切手代)はそれほど高額なものではないことがご理解いただけたと思います。
大規模な訴訟や芸能人の高額慰謝料の離婚事件などがメディアで話題になり、どうしても頭に残りやすいので、「裁判はお金がかかる」とのイメージがあります。
しかし、紹介した貸金返還や建物明渡し以外の訴訟であっても、一般の方が遭遇する可能性のある訴訟では、手数料等の額がとんでもなく高額になるということはそれほど多くはないと思います。
司法書士に依頼する費用は高いか安いか
裁判所に納付する費用以上に一般の方が関心があるのは、司法書士などの専門家に依頼した場合の費用だと思います。
専門家に依頼する費用は、高額のイメージがあり、かつ、訴訟で勝っても相手から取り返せないのが原則ですから尚更気になるところでしょう。
費用対効果で考える
当事務所を含め、多くの司法書士事務所ではホームページ上に報酬基準を公開していますが、これについては「費用対効果」で考えてみていただく必要があります。
例えば、自分ですべての訴訟手続きをした場合、書籍やインターネットで調べるところから始まり、最終的に申立て書類を作成して提出するまでどのくらいの時間(日数)がかかるでしょうか。
日給1万円の収入がある人が、数日かけて自分で作業をしたら、それは数万円分の労働をしたことと同じです。にもかかわらず、完成した書類が本当にこれで良いのか自信がない、裁判所で補正を指示されてしまい、遅々として手続きが進まない・・・。そうであるならば、訴訟は専門家に依頼して、自分は本業に専念した方がよっぽど費用対効果は良いと思われます。
さらにもう一つ、費用対効果の視点で考える必要があるのは、専門家に頼んで得られる利益との関係(バランス)です。
一つの例として、破産の申立ては、法律の専門家に依頼すると、安くても概ね20万円~の報酬がかかります。この金額だけを見るとなかなか高額ですが、破産の申立てにより得られる利益は数百万円(ひとによってはそれ以上)の債務の免除です。自分でできないのであれば、明らかに専門家に依頼するメリットがあるでしょう。
このように、専門家に依頼する場合は、金額の高い安いのみで判断するのではなく、依頼することによって得られるメリットとのバランスを考える必要もあります。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
2回にわたり訴訟にかかる費用についてご紹介してきましたが、各種手続きにかかる費用や当事務所に依頼した場合の費用など、少しでも疑問な点があれば、お気軽にお問い合わせください。
当事務所では、事前の法律相談はもちろんのこと、各種の裁判所提出書類の作成等、問題解決に向けて幅広くお手伝いをすることができます。
初回相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問合せください。ご連絡をお待ちしております。
以上
合わせて債権回収、または建物明け渡し・滞納賃料回収のページもご覧ください。