遺産分割(7)(相続債務)
今回は、引き続き遺産分割調停の「遺産の範囲」に関する具体的な疑問点・問題点をご紹介していきます。まずは、コラム「遺産分割(1)」からご覧いただけると幸いです。
遺産の範囲に関する問題点
相続債務は、実務上、遺産分割調停の場で問題になりやすいものの一つです。
相続債務
相続債務、例えば、被相続人が借り入れをしたまま残っている借金について、遺産分割調停で分割の対象として話し合うことができるのでしょうか?
相続債務がある場合、一般的には借金の残りなどの金銭債務が多いと思いますが、これについてはコラム「遺産分割(4)」で述べた「預金」と同様に考えることができます。
すなわち、金銭債務は可分であるため、相続開始と同時に相続分に応じて各相続人に当然に分割されることになります。
そのため、「遺産の範囲」の要件3「未分割の(分割されていない)財産」という要件が欠けており、遺産分割調停で取り扱う対象財産ではないということになります。
実際のところ
ただし、実際の取り扱いは、やはり預金と同様に考えられます。
すなわち、相続人の通常の感覚としては、「この財産を取得する代わりに、この借金を肩代わりする」といったように、プラスの財産と相続債務を合わせて遺産分割を考えているのがほとんどだと思われます。そのため、「相続人全員の合意」があれば、遺産分割調停で取り扱うことができることになります。
債権者の存在に注意
相続債務を遺産分割調停で取り扱うとしても、相続人の話し合いによって債権者を害することはできません。
例えば、父が債務を残して亡くなったところ、相続人である3人の子供のうち長男だけが当該債務を負担することとして遺産分割をしました。
この合意は、共同相続人である3人の間では有効ですが、債権者に対しては、その同意なくして対抗することはできません。
そのため、債権者の立場からすると、相続債務は当然に分割されているとして、各相続人に対し本来の相続分ずつ請求をしても良いですし、相続人間の合意の結果に乗っかって、長男のみに債権全額を請求することもできることになります。
遺産分割調停と遺産分割審判
今回で、「遺産の範囲」についての問題点等の話はひとまず終わりになります。最後に、遺産分割調停と遺産分割審判における「遺産の範囲」の話をしておきたいとと思います。
調停で話合いがまとまらない場合は、調停不成立として、原則として審判手続に移行します。審判手続では、当事者から提出された各種資料や事実の調査の結果に基づいて、裁判所が最終的な判断を示すことになります。
今まで述べてきたように、調停手続は話し合いの手続ですので、「相続人全員の合意」があれば割と柔軟に色々なものを遺産分割の対象として手続に取り込むことができました。
しかしながら、審判手続は裁判所が判断をする手続ですので、本来、遺産分割手続で扱えないもの(葬儀費用、遺産管理費用、相続債務など)は、原則として取り扱うことができなくなります。
そうすると、ここまで手続を進めてきたにもかかわらず、相続人が期待するような抜本的な解決を図ることができない場合も十分にありえます。
結局、当事者間で自由に話し合える「遺産分割協議」から始まって、「遺産分割調停」、「遺産分割審判」と手続が進むにつれ、その対象となる「遺産の範囲」が狭まってくることとなります。そうであるからこそ、裁判所を介さない遺産分割協議の段階で出来る限り合意することが、時間的にも費用的にも一番良いということになるのです。
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以 上
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