遺産分割と登記手続
今までに遺産分割調停に関するコラムをいくつかご紹介したところですので、それに関連して、今回は、遺産分割と登記手続のお話しをしていきたいと思います。
相続登記の単独申請
不動産登記の申請は、共同申請が原則です。土地の売買であれば売主と買主、抵当権を設定するのであれば所有者と抵当権者が共同で申請するといった具合です。
しかしながら、相続登記(相続による所有権移転登記)は、共同相続人の一人が単独で申請をすることができます。
相続登記は、被相続人から相続人に対し名義変更をする登記ですので、被相続人が死亡している以上、共同で申請できないのは当たり前と言えば当たり前なのですが、相続人が複数人いる場合であっても、そのうちの一人から申請できることに特徴があります。
単独申請の直接の根拠は不動産登記法63条にあります。そして、相続登記をすることは共同相続人全員のためになる行為であるから、保存行為(=物件の現状を維持する行為)として相続人のうちの一人が単独で行うことができるとされています(民法252条参照)。
すなわち、遺産分割が完了するまでの間、相続人の一人が勝手に当該不動産を処分したりして紛争が生じないよう、とりあえず共同相続人全員の共同所有(共有)状態にしておくができるのです。
そのため、相続人の一人が単独で相続登記の申請ができるといっても、自分の持分(法定相続分)のみの申請をすることはできず、あくまで全共同相続人のために、当該物件全部の相続登記(被相続人名義から各共同相続人の共有名義にする所有権移転登記)の申請をすることになります。
遺産分割による共有状態の解消
前述した共同相続人の共有名義とする相続登記は、あくまでその後に遺産分割をして正式な所有者を確定させるまでの間の仮の姿であって、この共同相続登記をしたことをもって遺産分割をしたことにはなりません。
そこで、この後、遺産分割協議(又は調停)の結果にもとづいて、所有者を確定させる登記手続をすることになります。ただし、遺産分割後の実際の登記手続は、次の各場合により異なってきます。
①の状態で良いのか
被相続人が死亡し相続が発生したにもかかわらず、そもそも①のような状態が許されるのかという疑問があるかもしれませんが、特に問題はありません。その場合は、登記名義は被相続人名義のままということになります。
もちろん、死亡した者の名義のままにしておくことは、世間一般に公示される登記の機能としてあまりよろしくないのは事実ですが、遺産分割協議が早期に決着することが予想される場合や、相続人の一人による勝手な処分等で問題が起きるようなことが特にないようであれば、わざわざ費用をかけて共同相続登記をするまでもないのが実際のところです。
遺産分割後の実際の登記手続
1共同相続登記がされていない(被相続人名義のまま)場合
この場合、今さら共同相続登記をする必要はありません。
「相続」を原因として、被相続人から、遺産分割手続で当該不動産の相続人になったものに対し、直接所有権移転登記をすることができます。
登記原因はあくまで「相続」であり、「遺産分割」ではありません。相続登記なので、相続人(遺産分割により相続することになった者)から、単独で登記申請をすることができます。
なお、遺産分割が協議によるものか調停によるものかで登記申請の態様は変わりませんが、登記申請の添付書類が変わってきます。
すなわち、遺産分割協議にもとづいて登記申請をする場合は、被相続人の死亡の事実や相続人の範囲を明らかにするために、戸籍謄本等の添付が必要になってきます。
一方で、遺産分割調停にもとづいて登記申請をする場合は、戸籍謄本等の提出は不要になります。なぜならば、遺産分割調停をするにあたって、家庭裁判所が被相続人の死亡や相続人の範囲等をすでに確認しているため、法務局で再度の確認は不要だからです。
2共同相続登記がすでにされている場合
すでに相続人らの共有登記(例:持分1/3甲、持分1/3乙、持分1/3丙)がされているため、遺産分割手続で当該不動産の相続人になった者に対し、他の相続人は「遺産分割」を原因として、自己の持分を移転させることになります。
例えば、遺産分割により当該土地を取得することになった甲は、すでに1/3の持分を持っているので、残りの持分を乙と丙から譲り受け全ての持分を取得することになります。
「相続」ではなく「遺産分割」を原因とする権利移転登記になりますので、単独申請ではなく、登記申請の原則である共同申請になります。
よって、もらう立場(権利者)である甲と、渡す立場(義務者)である乙丙が共同して登記申請をすることになります。
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以 上
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