遺産分割(6)(葬儀費用・保険金)
今回は、引き続き遺産分割調停の「遺産の範囲」に関する具体的な疑問点・問題点をご紹介していきます。まずは、コラム「遺産分割(1)」からご覧いただけると幸いです。
遺産の範囲に関する問題点
実務上、遺産分割調停の場で問題になりやすいものについてご紹介していきます。
現金
預金とは異なり、現金については、当然に分割されるものではなく遺産分割の対象になります(最判平成4年4月10日参照)。
そのため、遺産分割前に、ある相続人から相続財産である金銭をまとめて保管している他の相続人に対し、自己の相続分に相当する額のみの金銭の支払いを求めることはできません(前出の判例参照)。
葬儀費用
被相続人の葬儀費用は、相続開始後に発生する費用のため、そもそも遺産ではありません。
しかしながら、各相続人が負担する額や範囲については、祭祀承継の問題など絡み一筋縄ではいかない場合も多々あります。
そのため、相続人全員の合意があれば、紛争を一括で解決するために遺産分割調停で分割の対象にして話し合うことができます。
なお、相続開始後に発生した遺産の管理費用(例えば、相続財産である土地建物の固定資産税など)も、葬儀費用と同様に考えることができます。
生命保険金(生命保険金請求権)
被相続人が、相続人の一人を保険金の受取人に指定している場合には、この生命保険金は遺産には含まれません。受取人は、相続によってではなく、あくまで保険契約の効力として保険金(保険金請求権)を取得するからです。そのため、この保険金は受取人の固有財産となります。
さらに判例は、受取人が、特定の相続人ではなく単に「相続人」と定められている場合にも、特段の事情のない限り、(各)相続人の固有財産になるとしています(最判昭和40年2月2日参照)。
生命保険金は、相続税の申告においては相続財産とみなされて計算するため、それと同様に考えて、遺産分割調停の遺産の範囲に含まれると主張する場合もあるようですが、同調停においての扱いは前述のとおりです。
ただし、あまりに多額の生命保険金を受け取った場合などは、その金額や遺産総額に対する比率等の諸事情を検討し、他の相続人との公平の見地から「特別受益として」遺産分割手続の中で考慮されることはあります。
なお、生命保険金は受取人の固有財産とされる以上、被相続人の相続について相続放棄をしたとしても、保険金請求権を失うことはありません。
次回以降に続きます。
引き続き、「遺産の範囲」についての疑問点・問題点について、お話ししていきたいとい思います。
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以 上
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