遺産分割(5)(預金その他)
今回は、引き続き遺産分割調停の「遺産の範囲」に関する具体的な疑問点・問題点をご紹介していきます。
まずは、コラム「遺産分割(1)」からご覧いただけると幸いです。
遺産の範囲に関する問題点
コラム「遺産分割(4)」で、預金についてお話ししましたので、預金に関するその他の問題点も見てみましょう。
遺産の捜索
被相続人の生前の収入や生活状況などから、もっと遺産があるはずだと主張する相続人が出てくる場合があります。さらに穿って見始めると、相続人の誰かが遺産の一部を隠しているのではないかとの考えも芽生えてきます。
これは、何も預金に限った話ではありませんが、不動産などの目につく財産と違い、預金口座があるかないかなどは、被相続人と同居していた者など近しいものにしかわからないのが通常です。
しかしながら、遺産分割調停手続の中で、裁判所が積極的に不明の遺産を探すことはしません。遺産分割調停は、あくまで今ある遺産を分割する手続だからです。
もちろん、調停手続の中で各相続人から話を聞き、必要な資料の提出を促すことはあるでしょう。ただし、仮に他にも遺産があると考えるのであれば、原則として、そのように主張する者自身が裏付けとなる証拠資料を提出することが求められます。
預金の無断払い戻し
被相続人の生前ないし死後に、相続人の一人が、無断で被相続人の預金を払い戻してしまう場合があります。金額や使途によっては非常に揉める原因にもなるでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、遺産分割調停は今ある遺産を分割する手続です。
被相続人の生前や死後に、預金が無断で解約や引き出しされた場合、その解決する手続は遺産分割調停ではなく、民事訴訟(不当利得返還請求や不法行為にもとづく損害賠償請求)によることになります。
ただし、これにも例外があり、無断払い戻し金の問題を含めて遺産分割調停で話し合うことができる場合があります。
すなわち、無断払い戻しをした相続人が、その使途や金額(払い戻しした額や現在手元に残っている額)を説明し、そのうえで、全相続人が遺産分割調停で考慮する範囲(金額)等に合意できれば、紛争を1回で終局的に解決するためにも、ことさらこの問題を調停から排除する必要はないからです。
なお、預金の無断払い戻し金の問題は、前述したように別途の民事訴訟で解決するのが原則であり、遺産分割調停においてはあくまで付随的・派生的問題にすぎないという扱いになります。
そのため、たとえ遺産分割調停の中で考慮することが可能とは言っても、この問題の解決のために必要以上に時間をかけることはせず、一定期限までに合意ができないときは原則に戻って、それ以上は調停の中でこの問題は扱わないということになります。
(補足)特別受益の主張
無断払い戻しをした相続人が一定の利益を得ているのは間違いないとして、「特別受益」として遺産分割調停の中で考慮すべきと主張される方もいるようです。
何とか遺産分割調停の中で解決をはかりたい気持ちはわかりますが、そもそも特別受益というのは被相続人から一定目的で贈与された場合のことですから、無断払い戻しが特別受益に当らないことは明らかです。
次回以降に続きます。
引き続き、もう少し「遺産の範囲」についての問題点等のお話しをしていきたいと思います。
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以 上
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