遺産分割(3)(遺産の範囲)
今回は、遺産分割調停について、前回の「相続人の範囲」の話に続き、「遺産の範囲」に関する具体的な疑問点・問題点のご紹介をしていきます。
まずは、コラム「遺産分割(1)」からご覧いただけると幸いです。
遺産の範囲の確定
一般的に「遺産」という語が示す範囲と、遺産分割調停において分割の対象となる「遺産」の範囲は異なります。
遺産分割調停で分割の対象となる遺産の要件は、原則として次の3つが必要です。
1 相続時(=被相続人の死亡時)に被相続人が所有していた財産
2 遺産分割時(=現在)にも存在している財産
3 未分割の(=分割されていない)財産
被相続人が死亡時に所有しているものだからこそ遺産と言うのだろうし、それが現在も存在するからこそ分割できることになる、そして未分割だからこそ分割手続をする・・・この要件だけを見ると、どれも至極当然のことを言っているように思われます。
しかしながら、ここから遺産分割調停の対象となる「遺産の範囲」について、様々な疑問点・問題点が発生してくることになります。
遺産の範囲に関する問題点等
以下、遺産の範囲に関連する問題点を具体的に見ていきます。
遺言書や遺産分割協議の有無
有効な遺言書や遺産分割協議がすでに存在し、それにより「全ての遺産」の分割方法が決まっている場合は、遺産分割調停はできません。上記の要件3「未分割」ではないからです。
これに対しては、遺言書や遺産分割協議の存在は認めつつ、次のような主張がなされることが予想されます。
1 遺言書はあるが、内容や作成過程に不備がありこの遺言は無効であるので、遺産分割調停をしたい。
1~3の主張の検討
上記1から3は、全て遺産分割調停の中でどうこうできる問題ではないです。
1については、遺言無効確認の訴えなどの民事訴訟で決着をつけることになります。
2については、遺留分減殺請求の問題として、別の調停や訴訟で決着をつけることになります。
3については、判例において、「遺産分割協議が成立した場合、相続人の一人が遺産分割協議で負担した債務を履行しないからといって、債務不履行による遺産分割協議の解除はできない」とされています(最判平成元年2月9日参照)。
遺産分割協議は可能
なお、以上述べてきたところとは異なり、有効な遺言が存在するにもかかわらず、相続人全員で合意をして、遺言と異なる内容の遺産分割「協議」をすることは可能です。
確かに遺言者(被相続人)の遺志はできる限り尊重すべきといえます。しかしながら、相続人は、全く相続をしない「相続放棄」が許されている以上、遺産分割手続において自己の相続分の全部又は一部を放棄することも自由だと言えるからです。
また、前述のとおり、有効に成立した遺産分割協議を債務不履行により解除することはできませんが、相続人全員の合意があれば、解除(合意解除)して分割協議をやり直すことも可能です。
次回以降に続きます。
引き続き、遺産分割調停における「遺産の範囲」についての疑問点・問題点等のお話しをしていきたいと思います。
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以 上
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