相続の単純承認
今回は、相続財産の単純承認についてお話ししたいと思います。
相続財産の単純承認
相続財産の単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を無制限に承継することです。
難しく言いましたが、日常会話の中で「亡父の財産を相続する。」と言った場合、通常はこの単純承認のことです。相続債務が多いなどの理由で行う「相続放棄」とは裏返しの概念になります。
法定単純承認とは
さて、相続の単純承認自体は通常の相続であり、格別問題はありませんが、別途「法定単純承認」という制度があります。これが今回の本題になります。
相続人が被相続人の財産を相続するような言動をした場合、その後になってから態度を翻して相続放棄等をすると、相続債権者や他の共同相続人ないし後順位の相続人らは不測の損害を受ける可能性があります。
そこで、このような第三者の保護のため、民法は、一定の事由がある場合には、当該相続人は単純承認をしたものとみなすこととしました(民法921条)。
以下、具体的にどのような事由が単純承認に該当するか見ていきます。
相続財産の処分(921条1号)
相続人が、相続財産の全部又は一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。
1 処分行為とは、事実上の行為(家屋の取り壊しなど)も法律上の行為(土地の売却処分など)も含みます。なお、保存行為(相続財産の現状維持行為)は、単純承認行為に含まれません。
2 判例には、相続債権を取り立ててその取立金を収受することや、被相続人の財産について遺産分割協議をしたことなどが法定単純承認に該当するとした事例があります。
3 ただし、形式的に単純承認行為に該当する行為であっても、「相続人が自己のために相続の開始した事実を知り、又は少なくともその事実を確実に予想しながら処分したことが必要である」とされています(最判昭和42年4月27日参照)。
4 また、実際によく見る事例として、被相続人の預貯金等の遺産から、同人の墓石代や葬儀費用、未払いになっていた入院費用などを支出した場合などは、相当とみられる出費の程度であれば、単純承認行為には当たらないとされています。
以上のように、当該処分行為が単純承認行為に該当するか否かは、処分した財産の種類やその価値、処分に至る経緯などを総合的に考慮して判断されることになります。
相続放棄等の考慮期間の徒過(921条2号)
相続人が、一定期間内に相続放棄等の手続をとらなかったときは、当然のことながらその反射的効果として、単純承認をしたものとみなされます。
相続財産の隠匿等(921条3号)
相続人が、相続放棄等をした後であっても、相続財産の全部または一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、又は悪意で財産目録に記載しなかったときは単純承認をしたものとみなされます。
相続人が相続放棄等をした後であっても、このような不誠実な行為をするにいたったときは、すでになした相続放棄等の効果を失わせて、単純承認をしたものとみなすこととしたものです。
隠匿とは、文字通り遺産を隠すこと、すなわち遺産の存在が容易に判明しないようにすることです。ひそかに消費するとは、相続債権者に不利益になるのを承知のうえで自己のために遺産を消費することです。
(補足)921条3号但し書き
前述の921条3号には例外を認める但し書きがあります。
すなわち、相続人が相続放棄をすることによって新たに相続人となった者が、その相続を承認した場合、第1の相続人の相続放棄は効力を維持し、第2の相続人の相続が有効とされるというものです。
この場合には、第2の相続人が登場していることから同人の利益を保護する必要があること、相続債権者の利益を害することがないことなどから、第1の相続人の単純承認行為は不問に付すこととしたのです。
ただし、第2の相続人から第1の相続人に対して、隠匿消費した財産について損害賠償請求等をなしうることは別問題です。
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以 上
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