相続の基礎 相続分の譲渡と登記

 今回は、相続分の譲渡と登記手続の関係について、ご紹介していきたいと思います。

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司法書士 佐藤俊傑

相続分の譲渡と登記手続の関係

例)父が死亡。相続人はその子であるA、B、Cの3人。相続分は各々1/3ずつ。
 不動産の名義は亡父のままになっている。

 上記の例を前提に以下の話を進めていきます。

 相続分の譲渡とは、遺産分割前に、自己の相続分を他の相続人や第三者に譲渡することを言います。
 相続財産に不動産がある場合、所有者である父が死亡した以上、何らかの登記手続が必要なことはご理解いただけると思います。
 しかしながら、相続人Aが、他の相続人Bに譲渡した場合と、第三者Dに譲渡した場合とでは、必要な登記手続に差異が生じてきます。

相続人間の譲渡(AがBに相続分を譲渡した場合)

 AがBに相続分を譲渡した場合には、その譲渡を証明する書類を添付して、直接、譲渡後の持分での所有権移転登記ができます。

 すなわち、亡父から、「相続」を原因として、「B持分2/3」、「C持分1/3」とする所有権移転登記ができるのです。
 相続分を譲渡してしまったAは登記手続の当事者として登場しません。その代わり、登記上は、相続分の譲受人であるBが、相続の開始時からあたかも譲渡後の合計相続分を有する相続人であるかのように扱うことになるのです。

第三者への譲渡(AがDに相続分を譲渡した場合)

 Aが第三者Dに相続分を譲渡した場合には、少々面倒になります。

 前述の「相続人間の」譲渡の場合と同様に考えれば、亡父から、「相続」を原因として、「B持分1/3」「C持分1/3」「D持分1/3」とする所有権移転登記ができそうですが、結論的にはこれはできません。

 Dは、相続分の譲渡を受けることによって、遺産分割協議等に参加できる「相続人たる地位」を有することになりますが、これはあくまで「相続人の地位」を有するだけで「相続人自体」ではないからです。

 非常に理屈っぽくわかりづらいところですが、要は、「本来の相続人」と「相続人の地位を有する者」は登記手続上明確に分けるということになります。

 「相続」を原因とする所有権移転登記は「(本来の)相続人」にしかできないとすること、並びに、第三者への相続分の譲渡の過程も登記上明らかにすることが、権利変動の過程を正しく公示する不動産登記の役割として重要と考えるからです。

実際の登記手続

 以上述べたところから、このケースの場合、次の2件の登記手続が必要になります。

  亡父から、相続人ABCへ、「相続」を原因とする所有権移転登記
  Aから、第三者Dへ、「相続分の売買(又は相続分の贈与など)」を原因とする所有権移転登記(=A持分全部移転登記)

 まず、相続登記が本来の相続人に対してしかできない以上、とりあえずDへの譲渡がなかった状態で相続を原因とする所有権移転登記をします。ABCそれぞれの持分は法定相続分どおりの各1/3ずつです。
 その後、相続分の譲渡を実現するため、2件目の登記をすることになります。

 まとめ

 以上述べてきた場合のほかにも、すでに法定相続登記がされている場合(遺産分割協議前にとりあえず法定相続分どおりに共同相続登記がされている場合。上記の例で言えば、亡父名義から、A持分1/3、B持分1/3、C持分1/3に登記名義を変更してある場合。)

などは、必要な登記手続が変わってきます。

 そのため、実際の登記手続は司法書士にお任せいただくのが一番安心だと思います。
 一般の方には、細かい理屈の部分は端折っていただいて、ただ1点、同じ「相続分の譲渡」であっても、譲渡する相手によって登記手続が変わり、手間や登記費用も変わってくることをご理解いただければ幸いです。

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以 上

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