相続の基礎 相続分の譲渡
今回は、遺産分割手続で問題になる「相続分の譲渡」についてご紹介していきたいと思います。
相続分の譲渡とは
以前に別のコラムにて「相続分の放棄」についてご紹介しました。今回お話しする「相続分の譲渡」はそれと兄弟のようなものですので、コラム「相続の基礎 相続分の放棄」と合わせて読んでいただくと解り易いと思います。
「相続分の譲渡」とは、遺産分割前に、自己の相続分を他の相続人や第三者に譲渡することを言います。
相続分の譲渡の対象は、あくまで相続財産全体に対して自己が有する「割合的な」持分という観念的なものです。個々の相続財産についての持分を譲渡するという意味ではありません。
相続分の譲渡の利用・メリット
これはほぼ「相続分の放棄」の説明と同様です。
すなわち、相続争いに巻き込まれたくないなどの理由で遺産分割協議には乗り気ではない相続人は、相続分の譲渡をすることによって、当該遺産分割協議から離脱することができるのです。
家庭裁判所の遺産分割調停がなされていた場合、「相続分譲渡証書」を提出すれば、その遺産分割調停事件の当事者ではなくなり、今後、原則として調停期日に出席する必要はなくなります。そして、その一方で、相続分の譲受人が代わって遺産分割手続に参加することになります。
相続人間で相続分の譲渡をした場合、譲受人は「元々有していた相続分」と「新たに譲り受けた相続分」とを合計した相続分を有する者として、遺産分割手続に加わることになります。
このように、相続分の譲渡は、多数の相続人がいる遺産分割手続において、当事者を集約することができ、ひいては遺産分割協議をまとまりやすくするというメリットがあります。
さらに、相続分の譲渡によって相続債務を免れることができない点も「相続分の放棄」と同様です。相続債権者の保護ため、譲渡人及び譲受人とで重畳的(併存的)に債務を引き受けるものと考えられています。
「相続分の放棄」との差異
「相続分の放棄」と異なる点は、他に与える影響です。
「相続分の放棄」の場合、放棄された相続分は他の相続人がそれぞれの「相続分に応じて」取得します。
一方で、「相続分の譲渡」の場合、特定の者にのみ自己の相続分を取得させることができることになります。
(補足) 相続分の取戻権
相続分の譲渡をする相手方(譲受人)は、他の相続人である必要はなく、全くの第三者でも構いません。
しかしながら、第三者が相続分を取得し遺産分割手続に介入してくるとなると、遺産分割成立までの遺産管理や、遺産分割協議そのものが紛糾する可能性がでてくることは容易に想像がつくと思います。
そのため、民法はこのような場合において、他の相続人は、一定期間内であれば、その相続分の価額及び費用を償還して、譲受人たる第三者からその相続分を取り戻すことができるものと規定しました(民法905条)。
相続人の一人が、遺産分割前にその相続分を第三者に譲渡してしまうというケースがそれほどあるとは思いませんが、民法の条文があるので念のためご紹介しておきます。
相続分の譲渡と登記手続
相続財産の中に不動産がある場合、相続分の譲渡が他の相続人に対してなされたか、第三者に対してなされたかで、登記手続に差が生じてきます。この点は、コラム「相続の基礎 相続分の譲渡と登記」をご覧ください。
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以 上
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