相続の基礎 寄与分

 今回は、寄与分についてご紹介していきたいと思います。

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司法書士 佐藤俊傑

 寄与分の意義

 別のコラムにて、「特別受益」は遺産分割の話し合いをする際に問題になると述べましたが、寄与分についても同様です。遺産分割手続の中で問題になってくる事柄の一つです。

 特別受益は、「兄さんは、父の生前に土地をもらっているだろう。」とか、「お前だって、ずっと父から仕送りを受けていただろう。」などと、相続開始前に相続人のうちの一人だけが、すでに利益を受けているので不公平だという話でした。

 一方で、寄与分とは、「兄弟のうち私だけが父の家業を手伝ってきた。」とか、「老親の介護を私一人でずっとやってきた。」などという、相続開始前に自分だけが被相続人のために頑張ってきたのでそれを評価してもらわないと不公平だという話です。

 結局、特別受益も寄与分も、その方向性は違いますが、両者とも相続人間の公平の実現のために相続分を修正する要素として認められた制度なのです。
 そのため、特別受益についてのコラム(「特別受益の意義」「特別受益の対象」)と比較してご覧いただけるとより解り易いかと思います。

寄与分の算定方法

 次のように考えていきます。

 相続開始時(=被相続人の死亡時)に存在する相続財産の額から、寄与分の額を控除した額を、計算上、相続財産とみなす(これを「みなし相続財産」と言います。)。
 みなし相続財産を、相続分(相続割合)で割って、各自の具体的相続額を算出する。
 寄与分のある相続人(寄与者)だけは、さらに、2で計算された具体的相続分に寄与分の額を加え、最終的な相続額を算出する。

例)父死亡。相続人は子A、B、Cの3人のみ。
   父死亡時の相続財産 900万円
   Cの寄与分の額   300万円

 ① みなし相続財産の額 900万円-300万円=600万
 ② 相続分で割る    600万円× 1/3 =200万円
 ③ 寄与者の相続額   200万円+300万円=500万円

 以上から、相続額はA200万円、B200万円、C500万円となり、総額が父死亡時に実際に存在する相続財産の額900万円と一致すること、及び相続人間において寄与分が考慮され公平に分割されたことがわかると思います。

寄与分の対象~そもそも何が寄与分に該当するのか

 寄与分にあたる態様として、法律は「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護、その他の方法」を挙げています(民法904条の2第1項)。
 以下、順番に見ていきます。

1被相続人の事業に関する労務の提供

 典型的な事例としては、子が給料をもらわずに被相続人の営む農業や自営業の手伝いをしていた場合などです。

2財産上の給付

 子が被相続人に金銭を贈与したとか、被相続人の債務を弁済したなどという場合です。

3被相続人の療養看護

 妻が長期間にわたって被相続人である夫を看護したとか、長女が結婚もせずに病気の父を療養看護していた場合などです。

寄与分の要件

 寄与分の対象となる行為であっても、さらに次の各要件を検討する必要があります。

1その行為により、被相続人の財産が維持又は増加されたのか

 寄与分が認められるためには、前述のような行為により「被相続人の財産が維持又は増加されたこと」が必要です。

 前述の例で言えば、子が無償で家業に協力したために、被相続人は農地や営業資産を手放さずに済んだとか、子が病気の父の療養看護をしてくれたおかげで、ヘルパー等を依頼する費用の支出を免れ、父の財産が減少するのを防いだなどです。

2寄与行為に対し対価を受けていないこと(無償性)

 寄与行為があっても、すでにその対価や補償を与えられている場合は、寄与分は認められません。

3特別の寄与と言えるのか

 寄与の程度は、「特別の」寄与であることが必要です。これは「通常の」寄与は除くという趣旨です。
 すなわち、法律上、夫婦間にはお互いに協力扶助する義務があり、親族間にはお互いに扶養する義務があります。
 そうである以上、その程度に収まるような寄与は当然のことをしただけということであり、寄与分としては考慮されないということです。他の相続人に比べて貢献の度合いが大きいというだけでは足りません。
 結局、これは程度の問題であり、相続人間の公平という見地から検討される事柄です。

まとめ

 以上述べてきたところからわかるとおり、その行為が寄与分として認められるか否かは、特別受益の場合と同様、一律に明確な基準はありません。
 また、特別の寄与であることなどが要件であることから、なかなか実際の手続の中で認定されるのは難しいところがあると思います。

 そして、これも特別受益の場合と同様ですが、ずっと過去の話で、かつ家族間のこととなると、そもそも証拠となるものを提出できるのかという問題や、お互いに主張し合うことにより遺産分割が紛糾する可能性もでてきます。
 このような点も踏まえてどこまで主張していくかを検討する必要があるのです。

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以 上

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