競売手続における配当順位
今回は、競売手続における配当順位の話をしていきたいと思います。
はじめに~担保不動産競売と強制競売
強制執行の一手段として、不動産の競売手続があります。
そのうち、抵当権などの担保権の実行による競売(=担保不動産競売)は、裁判手続を経ずに競売手続の申立てができますが、実務上はほとんどが金融機関の申立てです。個人の方が、お金の貸し借りをする際に抵当権を設定することは少ないからです。
一般の個人の方が行う競売手続は、まず裁判を起こして勝訴判決等を得て、それにもとづき競売の申立てをする(=強制競売)ことが通常だと思います。
なお、「強制競売」という語は、競売手続一般を指す言葉としても使われますが、前述のように、「担保不動産競売」とそれ以外の競売手続を区別する用語としても使用されます。
ここでは、後者の意味、すなわち判決や和解調書などの裁判所のお墨付き(=まとめて「債務名義」と言います。)にもとづく競売手続を指すものとして使用しています。
競売手続における配当順位
では、一般の方が「強制競売」の申立てをし、無事不動産が売却されたとき、売却代金はどのように配られる(=配当される)のでしょうか。
債権者が複数人いる場合、必ずしも競売の申立てをした債権者が優先して債権の回収ができるというものではありません。配当される順位は、民法や国税徴収法(ないし地方税法)等により決まっています。
実務でよく出てくる一般的な債権の順位は次のとおりです。
第4順位の「優先権のない一般の私債権」というものが、勝訴判決や和解調書等の債務名義により認められた債権のことになります。
判決というと、裁判所のお墨付きで強い効力があるように思われますが、こと競売手続の配当順位については非常に順位が低くなります。
配当順位の説明
第1順位 共益費用たる執行費用(いわゆる手続費用)
競売手続を進めるためにかかった手続費用のことです。
具体的には、執行官が物件の調査をしたことによる現況調査手数料、評価人が不動産の鑑定評価をしたことによる評価手数料、裁判所から関係者に各種文書を発送するための郵便費用などです。
競売手続は、申立債権者だけではなく、全ての債権者の利益のために行われるものなので、そのためにかかった費用を最先順位で回収できることについては特に違和感はないのではないでしょうか。
申立債権者は、競売申立て時に一定額の予納金を裁判所に積み、そこから各種手続費用を立て替え払いします。そして、競売不動産が落札され、その売却代金を配当する段階で、申立債権者は立て替えた費用を優先的に回収するという流れになります。
第2順位 公租公課
公租公課とは、単純に税金と思っていただければ結構です。
債務者が各種税金を滞納している場合、その税金を所轄している役所(市、税務署、県税事務所など)は、一定の手続を経れば、競売不動産の売却代金の配当にあずかることができます。
税金は、国や市町村などを支える重要な財源のため、社会政策的な見地から競売手続における配当順位が高くなっています。
なお、ここで言う債務者の滞納税金とは、競売の対象物件に係る税金(固定資産税など)だけではなく、市県民税や健康保険税(料)、軽自動車税など当該債務者が滞納している税金は全て含まれます。
また、税金の中でもさらに配当の順位付けがあるのですが、詳細はここでは割愛します。
第3順位 抵当権等によって担保される債権
住宅ローンなど多額の借り入れをする際、所有する不動産に抵当権を設定することは通常よくありますが、こういった抵当権者の順位も一般の私債権者より上になります。
抵当権者は、貸金の滞納があった場合、その不動産を競売にかけて売却代金から貸金を回収することを予定しています。そもそも抵当権(担保権)というものの性質がそういうものだからです。
また、当該不動産に抵当権が設定されていることは、誰でも閲覧が可能である不動産登記簿(不動産登記事項証明書)を見れば明らかです。
こういった点から、抵当権者の方が一般の私債権者より配当で優先することとされており、そうであったとしても、一般の私債権者にとって何ら不意打ちになるようなことではないと言えるのです。
なお、前述の※のところで記載したとおり、「法定納期限等」を基準に公租公課との優先関係が決まります。
「法定納期限」とは税法上の言葉ですが、要は、「法定納期限」という法律上の基準日と抵当権設定日の前後で、公租公課と抵当権の優先関係は変わるということです。
いずれにせよ、両者とも一般の私債権者に優先することには変わりありません。
第4順位 優先権のない一般の私債権者
実務上はあまりありませんが、「先取特権」など一般の私債権者に優先する債権の種類は他にもあります。
ただでさえ、競売不動産の落札価額は一般市価より安いのに、配当順位も低いため、一般の私債権者まで配当金が回らないことは珍しいことではありません。それが、「無剰余(むじょうよ)取消」という問題に繋がっていきます。
無剰余ないし無剰余取消については、コラム「競売手続における無剰余」、「競売申立て前の無剰余の検討」を是非一度ご覧ください。
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以 上
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