相続の基礎 特別受益の対象
今回は、特別受益の対象について、お話をしていきたいと思います。先に、コラム「相続の基礎 特別受益の意義」からご覧いただけたら幸いです。
特別受益の対象~何が特別受益に該当するのか
持戻しの対象となる特別受益について、法律上は「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本」として受けた贈与と規定されています(民法903条1項)。
これだけの規定であり、具体的に贈与を受けた財産の種類や金額等についての決まりはありません。そのため、なにが特別受益に該当するかは一律に決めることはできません。
一般的には、婚姻・養子縁組のための贈与とは、持参金や支度金などを意味します。
また、生計の資本としての贈与は、個人の生活や資産状況によって異なりますが、居住用の不動産、開業資金や営業資本、高等専門教育の費用などが考えられます。
扶養義務からの検討
さて、形式的に「婚姻、養子縁組のためもしくは生計の資本」として受けた贈与に該当するとしても、次に、扶養義務の観点から検討しないといけません。
親子間や一定の親族間であれば、お互いに扶養義務があります(民法877条)。そうすると、親から子に贈与があったとしても、あくまでそれは扶養の範囲の話となれば、親が子に対し、親として当然すべきことをしただけで、「特別な」受益ではないということになります。
よって、この場合は持戻しをする必要がなくなります。
持戻し免除の意思表示
さらに、被相続人が、持戻しの免除の意思表示をすれば、持戻しは不要になります。
どういうことかというと、父が長男Aに対しある財産を贈与する際、「これは〇〇〇という理由があって長男Aに贈与するのであるから、将来の遺産分割で考慮する必要はない。」という意思表示をしていれば、原則それに従うということです。
まとめ
以上をまとめると、特別受益として持戻しが必要な贈与か否かは、
を検討していくことになっていきます。
ただ、大方はお察しのとおり、1~3全ての項目について、具体的で明確な基準がないものになっております。
3だけは一見明確な基準のようにも思われますが、これは黙示の意思表示でもよいことになっています。
つまり、被相続人の持戻し免除の意思が、書面等で明らかに残されていなくても、同人はそう思っていただろうと免除の意思が推測されれば足りるということになります。よって、3も明確な基準にはなりえません。
結局、当該贈与が特別受益として持戻しの対象となるか否かは、諸事情(贈与の額や時期、理由など)を総合考慮して、特別受益の制度が認められた趣旨(=相続人間の公平)を十分斟酌して判断するしかないということになります。
遺産分割協議における注意
コラム「相続の基礎 特別受益の意義」でも述べたとおり、特別受益は遺産分割の話し合いをする際に問題になります。
そして、何年前の贈与であれば、もう特別受益の持戻しの主張ができなくなるという時間的制限もありません。
そのため、父が死亡時にはすでに中高年になった子供たちが、自分らの何十年も前の婚姻費用を持ち出して「あれは特別受益だろう。」と主張することも可能です。
そうすると、一見自分の相続分が増えるようにも思えますが、簡単にそうはいかないでしょう。
誰かが特別受益の主張をすれば、必ず相手方も「そういうお前も父から援助を受けただろう。」と、同じく何十年前の話を持ち出すでしょう。そして、何十年前のことで、かつ家族間のことなので、お互い大した証拠もなく、結果、遺産分割協議が揉めて長期化することにもなってしまいます。
特別受益の主張をする場合は、このような点も踏まえてどこまで主張していくかを検討する必要があるのです。
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以 上
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