免責に対する債権者の対応方法
今回は、免責に対する債権者側の対応についてお話したいと思います。以前にご紹介したコラム(「破産手続における免責」「免責の不許可事由について」)と合わせてご覧ください。
免責についての意見申述
免責とは、個人の破産者に対し、その負っている債務についての責任を免れさせる制度です。そのため、当然のことながら免責の許可不許可について最も利害関係があるのは債権者です。
そこで、債権者は、破産者について免責を許可することの当否について、裁判所に対し意見を述べることができます。
具体的には、破産(開始)決定がされると、その旨の通知が郵便にて各債権者に届きますので、裁判所が定める一定期間の間に書面にて意見を述べることになります。
意見申述のポイント
ここで難しいのは、「(債権者の意見は、)破産法252条1項各号に掲げる事由に該当する具体的な事実を明らかにしてしなければならない。」(破産規則76条2項)となっていることです。
破産法252条1項各号というのは、免責が不許可となる事由が列挙されている条文です。
そうすると、債権者としては、「破産者にはこれこれこういう事実があり、それは破産法252条1項〇〇号に該当するので、免責を不許可にしてください。」という意見を述べなければならないことになります。
自分がお金を貸した相手や売掛金のある取引先が破産しましたという通知が裁判所から突然くれば、驚いたり憤慨したりするのは当然のことです。
さらに、感情的な問題だけではなく、場合によっては自分も連鎖倒産してしまうことだってあります。
しかしながら、免責が法制度として認められている以上、前述のように具体的に免責不許可事由があることを債権者側が主張しなければならないのです。
実際のところは・・・
債権者の意見申述は前述のようなもののため、債権者から意見書が提出されること自体が少なく、提出された場合でもその多くは免責を不許可とする法律上の理由にはならない単なる「陳情書」的な書面であることが実際のところです(例えば、「破産されたらこちらも困る」、「破産したのに詫びもない」などの内容)。
免責についての意見申述期間は裁判所により異なりますが、最低でも1か月以上の期間が定められますので、破産者に免責不許可とする事実があると考えるのであれば、じっくりと検討して感情論ではなく「事実を記載した」意見書を提出する必要があります。
免責許可決定に対する即時抗告
前述した「免責についての意見申述」は、裁判所が免責について判断する前の手続ですが、即時抗告は、免責許可決定がされた後の債権者の不服申立て手段です。
即時抗告の申立てがされると、裁判所は、すでになされた免責許可決定を再検討します(「再度の考案」と言います。)。
そして、そこで当初の判断が翻ることがなければ、破産手続をした裁判所から高等裁判所に関係記録が送付され、高等裁判所にて最終判断がされます。ただ、実際のところはこの手続においても高裁で判断が覆ることは稀でしょう。
以上述べてきたように、免責について債権者が執り得る手段は非常に限定されており、よほどの事情がない限り免責不許可に持ち込むことは難しいところです。
(補足)そもそも非免責債権であるとの主張
以前、実際の破産事件において、「自己が有する債権は非免責債権なので、免責許可決定がされても関係ない。」と主張する債権者の方がいました。
なぜこのような主張をするかと言うと、破産法が規定する非免責債権の中に「破産者が知りながら債権者一覧表に記載しなかった債権者(ただし、破産者について破産開始決定があったことを知っていた債権者は除く)が有する債権」(破産法253条1項6号参照)というものがあるからです。
「債権者一覧表に記載しなかった」のは事実だとしても、「知りながら」「知っていた」などは、破産手続をした裁判所では判断できません。
結局、債権者が自分の債権は非免責債権であり、いまだ請求することができると考えるのであれば、別途訴訟(貸金返還訴訟など)を提起して決着をつけるしかありません。
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以 上
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