DV~保護命令申立ての注意点1

 今回から数回に渡って、DV(ドメスティックバイオレンス)に関して、「配偶者暴力に関する保護命令手続」の注意点のお話をしていきたいと思います。

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 司法書士 佐藤俊傑

 保護命令の意義

 実務経験上、保護命令とは、「妻が夫から暴力を振るわれた場合、裁判所が、夫に対し、妻に近づくなという命令を出してくれる」ものと考えている方が多いです。
 概ねそれで正しいのですが、よくよく話を聞いてみると、本制度の趣旨や効果を誤解している方も少なくありません。

 ここでは、実務経験上よくある誤解や注意点に絞ってお話していきたいと思います。

申立てができる方

1 妻からの申立てが一般的ですが、法律上は夫からも申立てできます。(※以下は、説明の便宜から「妻から夫に対する申立て」を前提に記載していきます。)

2 婚姻届出をした夫婦はもちろん、事実婚の関係でも申立て可能です。また、すでに離婚している場合も、婚姻中に受けた暴力等を理由とするのであれば申立てをすることができます。

  さらに、生活場所(生活の本拠)を共にする交際関係(いわゆる同棲関係)の場合も申立てができます。

3 被害者本人が申立てをしなければなりません。両親が娘を心配して相談にくるケースがありますが、被害者の両親や子供たちは申立人や代理人にはなれません。

暴力や脅迫(=まとめて「暴力等」と言います。)を受けた程度

1 一般的に、刑法上の「暴行罪」や「傷害罪」「脅迫罪」に当たる程度のものが保護命令の対象になると言われており、決して軽いものではないです。

  これは、保護命令に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という強い効力があるため、それとのバランスにより、申立てする方も慎重にすべきとの趣旨だと言われています。

2 暴力等の程度は前述のとおりですが、暴力等を受けた時期や回数に制限はありません。1回だけならダメということもないし、10年も前ならダメという規定もありません。

  しかし、保護命令の発令要件は、「暴力等を受け、今後、配偶者からの(更なる)身体に対する暴力によりその生命身体に危害を受けるおそれが大きいとき」とされています。
 そのため、例えば10年以上も前に1度だけあった暴力を理由に申立てをしても、「その後もずっと同居していたのに何にもなかったのでしょう?」と、発令を否定する方向に傾くことは一般的にあり得るのではないでしょうか。

3 「夫が子供に暴力を振るうのでそれを止めさせたい。」というのは、それ単独では保護命令の理由になりません。誤解が多い点です。
 確かに、保護命令の発令内容の一つに、「子に対する接近禁止命令(夫が妻と同居している未成年の子に近づくことを禁止する)」というものがあります。
 しかし、この命令は、夫が、妻と同居している子供を勝手に連れ戻すおそれがあるなどの事情により、子供に関することで交渉や面会を行うために、妻が夫に会わざるを得なくなる状態を防ぐことを目的として認められる命令です。
 つまり、保護の対象はあくまでも暴力等を受けた妻であり子ではありません。
 そのため、子に対する接近禁止命令は、申立人である妻に対する接近禁止命令が発令される場合に、オプション的(追加的)に発令が可能になります。

次回以降に続きます

 引き続き、注意点2を是非ご覧ください。

以 上

合わせて家庭内の困り事のページもご覧ください。

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