誰でも遺言をすることができるのか?遺言能力の話
今回は、遺言をするのに必要な能力「遺言能力」についてご紹介していきたいと思います。
遺言の有効性
はじめに、タイトルの意味をもう少し説明しますと、遺言自体は誰でもできます。
どんな形式の遺言であれ、遺言者の死亡後、相続人などの利害関係人が、それが有効な遺言(遺言書)だと認めるならば何ら問題は起きません。
ここでお話しをするのは、誰でも「法律上有効な」遺言ができるのか否かということです。
「遺言無効確認の訴え」という類型の裁判があります。その名のとおり、当該遺言は無効だと争う訴訟ですが、その理由とするところは種々あります。
例えば「亡父は、当該遺言書が作成された頃はすでに認知症が進んでおり、このような遺言書を作成できるような正常な判断力はなかった。」など、遺言者の遺言能力が争われることがあります。
確かに、遺言書は、高齢になり将来が心配になってきた頃に作成することが多いため、こういった問題が起こりうるのだと思われます。相続人からすれば、内容が自己にとって不利な遺言書であれば、尚更無効だと思うことでしょう。
遺言能力とは
では、そもそも遺言をする能力「遺言能力」とはどのような能力なのでしょうか?
まず前提として、民法の原則は、満18歳をもって成年とし、単独で私法上の取引行為(例えば売買契約など)を有効になしうる能力(=「行為能力」といいます。)があるとしています。
一方、遺言の場合、遺言は死者の最終意思を尊重する制度ですので、行為能力のあるなしにかかわらず、できる限り誰でも遺言を残せるようにする必要があります。そこで、法律では、遺言能力は(18歳ではなく)満15歳に達すれば備わると規定されています。
もっとも、満15歳以上であっても、例えば重度の認知症であるなど「意思能力」(=自己の行為の結果を判断するのに足りるだけの精神的能力)すらない場合は、遺言能力は認められず、当該遺言は無効となります。
「〇〇能力」という言葉がいくつも出てきてわかりづらいところですが、遺言をするためには、「行為能力」までは不要だけれども「意思能力」以上のものは必要であるということになります。
実務的には、「遺言能力とは、遺言の内容及びこれによって発生する法的結果を理解・判断することができる能力」と定義づけられます。
遺言能力の有無の具体的な判断基準
では、遺言能力の有無は、具体的にはどのように判断されるのでしょうか?
この点は事案ごとの個別の判断にならざるを得ませんが、過去の裁判例を見ると、「遺言者の心身の状況(知的能力、障害の程度など)」は、当然のことながら判断材料の一つになっています。
その他にも「遺言の内容(内容の複雑さ)」、「遺言書作成に至る経緯(作成の動機、内容の合理性)」、さらに「遺言書の作成状況」など、様々な事情を総合的に考慮して遺言能力の有無の判断がなされています。
例えば、複雑な内容の遺言であればあるほど、その遺言書作成に要求される能力は高くなりますし、また、遺言者の生前の生活状況などから見て、そのような内容の遺言をすることに合理性があるか否かも検討されます。
さらに、遺言書を作成したときの状況については、当日の遺言者の心身の状況を推測する重要な判断材料になるでしょう。
紛争の予防策
遺言書を作成するにあたり、後日、遺言能力について紛争になりそうな場合は、あらかじめ予防策を講じておくことが大切です。
それには、遺言書作成日(作成時)ないしその前後の遺言者の心身の状況を記録しておくことが有用です。医師の診断書を作成してもらうのも手ですし、介護施設のヘルパー等の介護記録なども資料になるでしょう。
また、遺言者を日々看護している親族自身も日記をつけておいたり、遺言の作成状況を録画しておくのも方法のひとつです。
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
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以 上
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