遺言書に記載できること(付言の話)
今回は、遺言書の記載内容、特に「付言(ふげん)」についてご紹介していきたいと思います。
付言とは
遺言によって効果を生ずる事項(遺言事項)は、法律で決められています。
例えば、認知、遺贈、遺産分割方法の指定、相続分の指定などいくつかありますが、これ以外の事項を遺言書に記載しても法律上の効果はありません。
ただし、遺言事項以外の事柄の記載は、「法律上の効果がない」というだけで、遺言書に記載してはいけないということではありません。遺言者が、自分の言葉で遺言書を作成した動機や遺族に対する感謝の気持ちを記載しておくことにより、遺言者の真意が相続人にダイレクトに伝わります。
それは、相続人間の紛争を回避し、円満な遺言内容の実現に資するという「事実上の効果」があり、大変有益なものと言えます。
このように、遺言書には、法律上の効果はないけれども、相続人らに伝えておきたいことを付言(遺言書の「本文」に対し、付け加えて残す言葉なので「付言」と言います。)として記載しておくことができるのです。
付言の具体例
実務上見かけることが多い付言事項の例をいくつかご紹介します(あくまで例文です。)。
1財産の分け方の理由を記載した付言
「私の財産の分け方は本文に記載したとおりですが、長男Aには、二男Bに比べ、不動産をはじめ多くの財産を与えることにしました。これは、長男Aには、高齢で脚の悪い母親と今後も同居してもらい、母親の面倒を看てもらいたいと考えたからです。」
2家族への感謝の想いなどを記載した付言
「私のこれまでの人生は、大変幸せでした。私の死後も、家族が仲良く幸せな生活を送れることを祈っています。今まで本当にありがとう。」
3遺留分減殺請求権を行使しないでほしい旨の付言
「私は、妻Aと長男Bに多くの財産を与え、二男Cに対しては、一部の預金しか与えていません。その理由は、〇〇〇〇〇〇からです。二男Cは、この私の想いを理解して、遺留分減殺請求権を行使しないことを希望します。」
4寄与分の事情に関する付言
「私が、長男Aに対し、多くの財産を与えたのは、Aの寄与分を考慮したためです。すなわち、私が平成15年に交通事故の影響で寝たきりの状態になってしまった以降、本日までの長きにわたり、Aは無報酬で、献身的に私の看護をしてくれました。それにより、私は、ヘルパー等を頼むこともなく日常生活を送ることができ、また、私の財産も目減りすることなく維持することができました。」
5その他
例を挙げたらきりがありませんが、上記の他にも、自己の葬儀や納骨の希望等について残しておく付言や、残されたペットの飼育をお願いする旨の付言などもあります。
実際に経験した例で、自分の生い立ちから現在に至るまでをまとめて付言として書かれた方がいました。文字数はそれなりの量になってしまいますが、さながら〇〇家の家系図的な構成になっており、これはこれで良い付言だなと感じました。
付言の注意事項
繰り返しになりますが、付言事項はあくまで法律的な効力はありません。そのため、遺言者の死後、付言に記載した内容に従うか否かは、相続人など残された方々の誠意にかかっていると言っても過言ではないです。
しかし、たとえそうであったとしても、遺言作成時に一考する価値は十分あると思います。
なお、相続人に対してお願いする事項(「残された母の看護」や「ペットの世話」など)に法的効力もたせたい場合は、一定の財産を与える代わりに一定の行為等をする法律上の義務を負わせる「負担付きの相続(遺贈)」の条項なども検討すべきです。
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以 上
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