破産申立ての必要書類その6(不動産の資料)
今回は、「破産の申立てに必要な書類」をご紹介するコラムの続編です。(コラム「破産申立の必要書類その1」)からご覧いただければ幸いです。
必要書類9 所有する不動産に関する資料
一般的に必要な書類は次のとおりです。
不動産登記事項証明書
住居に関する資料として提出が必要になりますが、資産に関する書類としても必要になります。
2通提出する必要はありませんが、資産の現状を確認するための資料ですので、なるべく直近に取得したものを提出します(有効期間を定めている裁判所もあります。)。また、共同担保目録も添付しておいた方が無難です。
固定資産税評価証明書
申立てする年度の最新のものを提出します。
なお、不動産が未登記であることと課税されているか否かは別問題です。混同されている方がときどきいますので注意してください。
査定書
上記の評価証明書でも不動産の価格はわかるのですが、実勢価格を証明するために必要になります。
破産申立て時にすでに競売手続が開始され、同手続で売却価額が決まっていれば、期間入札通知書を添付しても良いですが、それ以外の場合は、不動産業者の査定書(鑑定書)を提出することが一般的です。
ただ、業者に査定をしてもらうにしても通常は費用がかかりますので、必ず必要か、どの程度のものが必要かなど不明な点があれば、事前に裁判所に問い合わせをしておくのが良いと思います。
ローン残高証明書
不動産に抵当権等の担保権が設定されている場合に必要になります。
前述の査定書などと比較して、オーバーローン状態(不動産の価格より残債務の方が多い状態)か否かを判断します。
オーバーローンと判断されれば、その不動産は破産手続では資産価値0円とみなされますので、破産手続の処理方法(同時廃止か管財か)にも影響を与える重要なところです。
オーバーローンの基準
では、不動産の価格より残債務がどれくらい多いとオーバーローン状態と認められるのでしょうか。
これは、裁判所により基準を設けています。残債務が不動産価格の1.5倍以上という基準(例えば、不動産の価格が1000万円、残債務が1500万円)が一般的のような気がしますが、1.2倍とする裁判所や2倍以上とする裁判所もあるようです。逆に言うと、2倍以上ある場合は、その他特段の事情がない限り、どこの裁判所であってもオーバーローンと認定されることはほぼ間違いないでしょう。
その他
「不動産が課税台帳に記載がない旨の証明書」を提出させる裁判所もあるようです。これは、当初から必要書類と明示されていなければ、裁判所からの指示があってから提出すれば良いと思います。
補足(査定について)
現在はネット等で簡易査定の依頼もできるようですが、書面の情報のみで査定しているため、往々にして実勢価格とかけ離れていることがあります。
私が裁判所で経験した件で、片田舎の交通も不便で買い手もつかない土地がありました。そのため、それを知っている地元の業者であれば相当低額の査定をすることが予想されましたが,申立人は、ネットで東京の業者に簡易査定を依頼したところ、非常に高額の査定書が提出されたということがありました。
そういう点からすると、査定を不動産業者に依頼するのであれば、現地の物理的状況や取引状況などを知っている地元の業者の方がより良いのではないかと思います。
その7へ続く
不動産は、資産価値が高い重要な資産であるため、破産手続の審査・進行でも大きなウェートを占めています。今後も破産申立てに必要な一般的な添付書類について記載していきたいと思います。その7はこちらからどうぞ。
以 上
合わせて債務整理・破産のページもご覧ください。
なお、破産手続については、以下のコラムがQ&A方式になっていて解り易いと思います。是非一度ご覧ください。
コラム「破産手続の質問(申立て編)」
コラム「破産手続の質問(不利益編)」
コラム「破産手続の質問(資産編)」
コラム「破産手続の質問(免責その他編)」