簡易裁判所の手続 支払督促
今回は、簡易裁判所の主な紛争解決手続の中の一つ、支払督促について取り上げていきます。
支払督促とは?
支払督促とは、訴訟によらずに金銭等を回収するための手続の一つで、訴訟よりも簡易迅速、かつ低額の費用で「債務名義」(=勝訴判決など、債務者の財産に強制執行するための裁判所のお墨付き文書の総称。)を得ることを目的とする手続です。
このように聞くと、訴訟に比べて良いこと尽くめのようですが、やはりデメリットもあります。以下、順を追って記載していきます。
支払督促の主なメリット
1 書面審査のみで手続が進む
支払督促は書面審査のみなので、訴訟のように裁判所に何度も足を運ぶ必要はありません。申立て自体も郵送で可能です。
ただし、申立書に補正がある場合、担当書記官と電話等で何度もやり取りをすることもありますので、可能であるならば、申立書は窓口に持参してその場でチェックをしてもらった方が早いかもしれません(場合によっては受付のみで、後日連絡となることもあります。)。
2 費用が低額
裁判所に納める手数料は、調停と同様、訴訟の半額になっています。
ただし、これも調停と同様、 請求する金額によっては訴訟との差は数千円程度のみであり、それほど大きいメリットではないかもしれません。また、後述する「異議」の申立てが相手方(債務者)からされた場合、このメリットは完全になくなります。
3 証拠書類が不要
支払督促は、裁判所書記官が、申立人(債権者)が提出した申立書を審査し、その主張に理由があると認められる場合には、相手方(債務者)の意見を聞かずに発令されます。その際、訴訟のように自分の主張を裏付ける証拠書類(契約書など)は不要です。
なお、「主張に理由があると認められる」というのは、文章に説得力がある云々ということではなく、売買代金なり貸金なり、それを請求するために最低限必要な法律要件が矛盾なく記されているということです。
支払督促のデメリット
相手方(債務者)から異議の申立てができる
支払督促は、相手方(債務者)の意見を聞かずに発令されます。そうだとすると、請求に理由がない場合や全くの言いがかりの場合がないとも言えません。
そこで、相手方は、支払督促手続を通して、合計2回異議の申立てをすることができます。
異議申立てには、一定の時間的制限や、異議申立ての時期による効果の差異など細かい話もありますが、いずれにせよ、異議の申立てがされると督促手続は訴訟手続に強制的に移行し、訴訟で決着をつけることになります。
すなわち、両当事者とも裁判所に出頭し、法廷で主張と証拠を出し合うという通常の裁判になるのです。
これにより、
そのため、仮に相手方が遠方に居住していた場合、訴訟になった途端、手続進行が困難になる可能性もありえます。
支払督促の実際のところ
結局、支払督促は、相手方から異議が出なければ訴訟よりも使い勝手が良いものになります。 実務では、信販会社や携帯電話会社などの利用が圧倒的に多いです。それは、契約内容や滞納がある事実自体にはほぼ争いがなく、かつ、全国にいる利用者(滞納者)に対する請求を大量に一括して処理するには、書面審理である支払督促が向いているからでしょう。
では、相手方から異議の申立てがされるケースはどのくらいあるのか?
結論から言うとかなり多いです。なぜならば、異議の申立てをするには理由がいらないからです。
実務上は、その後の訴訟の審理にも関係があるため、裁判所は、一応異議の理由を簡単に述べさせるようにしていますが、例えば「お金を借りたことは間違いない。それを返してないことも間違いない。でも、今は一括で返せないので分割にしてほしい。」などという言い訳でも異議の理由としては十分なのです。
さらに、裁判所から相手方に対し支払督促状を送付する際、簡単に異議申立てができるよう、異議申立書のひな形用紙や説明書を同封しているのが通常です。そのため、相手方はとりあえず異議の申立てをしようということになるのです。
流山パーク司法書士裁判所にご相談ください
支払督促手続は「書面審理、簡易迅速」との言葉だけに飛びついて選択するのは少々問題があります。結局のところ、支払督促手続が自分にとってベストの問題解決手段なのかどうかが一番判断に迷うところだと思います。
当事務所では、「支払督促申立書」の作成をはじめ、「強制執行申立書」などの各種裁判所提出書類の作成等,問題解決に向けて幅広くお手伝いをすることができます。
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以 上
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