抵当権の抹消と代理権の不消滅

 住宅ローンの完済後に、抵当権抹消登記を長期間放置しておいたときなどに起こり得る問題についての話です。

司法書士 佐藤俊傑

委任状に記載された代表者の変更

 住宅ローンが完済されると、通常、借り入れ先である金融機関から、同ローンのために設定された抵当権の登記を抹消するために必要な書類一式が送られてきます。
 当該書類には、登記原因証明情報(抵当権の解除証書)や登記識別情報(又は登記済証)、委任状などがあります。

 ところで、無事住宅ローンが終わり安心するせいもあるのか、必要書類を受け取ったにもかかわらず、抵当権の抹消登記をせずに長期間放っておくケースがときどきあります。
 そうすると、例えば、代表者Aの氏名が記載された委任状を受領していたところ、いざ抹消登記の申請をするときには、すでにAは退任しており、Bが代表者に代わっているということがあります。
 このような場合に、そのまま代表者Aの委任状を利用して抵当権の抹消登記ができるのでしょうか?

代理権の不消滅

 依頼者の方は、「少し放っておきました(笑)」程度で、金融機関の代表者が代わっていることなど意識していないことがほとんどですが、このような場合も、不動産登記法の代理権不消滅の規定によって問題なく抹消登記ができることになっています(不動産登記法第17条4号)。

 すなわち、金融機関の代表者からの委任の効力は、その代表者が退任しても効力は消滅せず、そうであるならば、以前に受領した(旧代表者からの)委任状もそのまま利用できるということになるのです。

 もちろん、その他にも、会社法人等番号の提供などにより変更があった部分を証明したり、登記申請書に代理権消滅の事実を記載する必要などありますが、その辺りの手続的な部分は、司法書士に手続を依頼していれば特に悩む部分ではありません。

補足:なるべく早めに抹消登記をしましょう

 ところで、ここまでの話は、金融機関から送付されてきた抹消登記の必要書類が、紛失せずに全て手元に残っていることが前提です。
 一部の書類を紛失等しているときは、場合によって、別の手続や追加の書類が必要になる場合がありますので注意が必要です。
 いずれにせよ、住宅ローンを完済し必要書類を受け取ったら、早め早めに登記申請をされることが一番ということです。

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以 上

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