講義案と研究本
今回は、裁判所の実務に関する書籍について、主に「講義案」と「研究本」の紹介をしてみます。
講義案と研究本
先日、司法協会が発行する「家事事件手続法下における書記官事務の運用に関する実証的研究~別表第一事件を中心に~」という本を購入しました。タイトルが長いですね。
同シリーズで「家事調停及び別表第二事件」についてのものも発売されているので、いずれ購入しようと思っています。
司法協会は、法律実務家向けの本を多数出版している法人ですが、裁判所職員総合研修所(総研)が監修した本も数多く出版しています。
その中で、裁判所の実務で特に使用されている本に「講義案」と「研究本」というシリーズがあります。最初に紹介した家事の本は、タイトルに「研究」とあるので「研究本」と呼ばれているものの一つです。
講義案
講義案は、さらに「〇〇〇実務講義案」と「〇〇〇法講義案」に大きく分かれますが、両方とも裁判所職員総合研修所の監修です。
前者は、裁判所実務における公式マニュアルです。
例えば、民事訴訟や簡裁実務全般をまとめた「民事実務講義案」は3分冊ありますが、地方限定のご当地ルールをのぞき、この見解に従って手続を行えば問題ありません。
後者は、その法律の基本書のような位置づけです。
中でも「刑事訴訟法講義案」などは、裁判所職員だけではなく、同法の基本書として一般の方にも非常に評判が良いのを耳にします。
なお、講義案はたびたび改訂されます。毎回買い替える必要は全くないですが、法律改正や影響の大きい最高裁判例などが出た場合は、見解や記載が全く変わる可能性がないわけではありません。
また、講義案は改訂されるたびに記載が詳しく丁寧になっているので、司法サービスの質の全国的な均一化には非常に役立っていると思いますが、逆に、そこに書いていないイレギュラーな事務は全然わからない、解決の糸口も掴めない書記官が出てくるというマニュアル主義の弊害も一部であるような気がします。
研究本
研究本は、選出された数人の研究員(裁判所書記官)が、長期間ある特定の分野について調査・研究をし、その研究結果をまとめた本です。
最初に紹介した本の他にも、「民事上訴審の手続と書記官事務の研究」(=上訴研究)、「民事訴訟関係書類の送達実務の研究」(=送達研究)、「執行文に関する書記官事務の研究」(=執行文研究)など様々なものがあります。
研究本の位置づけは、講義案が公式マニュアルなのに対し、より細かい事例集・Q&A集といったところでしょうか。
研究本を編集する際、実務でよくある事例について、全国の裁判所にアンケートをとったりしているので、当該手続にはどの方法をとるのが一般的なのかなど、講義案とは違った情報が盛り込まれています。
ただし、研究本は公式マニュアルではないため、その取扱いは次のように両極に分かれます。
1この問題の解決策は講義案には載っていない。が、研究本にAという方法の記載があるので、その方法で手続を進めよう。
2この問題の解決策は講義案には載っていない。一方,研究本にはAという方法が載っているが、しょせん研究本かぎりの見解なので、今回はBとしよう。
どちらの見解になるかは、事例ごとに裁判官や裁判所書記官の判断(まず結果ありきの判断)によるとしか言いようがないところです。
なお、講義案と異なり、研究本は原則として改訂版が出ません。
講義案と研究本の対象者
両方の書籍とも、様々な裁判実務において、裁判所(裁判所書記官)がどのように手続を行うかという視点のもとに書かれた書籍です。
しかしながら、裁判所に対し各種申立てを行う一般の方・外部の方にとっては、裁判所がこの場合どう動くかという予見可能性が高まるため、非常に有益な本だと思います。
なお、どの本も大きめの本屋やネットで誰でも普通に購入できます。
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以 上