ペットの飼育禁止特約
建物の賃貸借契約において、ペットの飼育を禁止する特約が付いている場合があります。今回はこの特約についての話です。
賃借人の用法遵守義務
賃貸借契約において、借主(=賃借人)は、貸主(=賃貸人)に対して、賃料を支払う義務があることは当然ですが、その他に「契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物を使用収益する義務」(民法616条、594条1項)を負います。
一般的に「用法遵守義務」などと言いますが、ここでいう「用法」とは広く目的物を使用する方法・態様・条件などのことを指しています。
ペットの飼育禁止特約自体の有効性
建物の賃貸借契約では、その契約書の中で「犬、猫等のペットを飼育してはならない。」旨の所謂ペットの飼育禁止特約が設けられていることがあります。
これは、ペットの飼育による悪臭や騒音の発生などにより近隣トラブルが発生する原因となるおそれがあったり、ペットが部屋を傷つけるなどして建物自体の維持・管理の見地からも問題が生じるおそれがあることを理由とするものです。
そういう点からすれば、特にアパート等の集合住宅の場合にはこの特約の必要性が高いと言え、裁判例でもペットの飼育禁止特約自体は一般的に有効であるとされています。
ペットの飼育禁止特約に違反した場合の賃貸借契約の解除
ペットの飼育禁止特約に係る義務は、賃料の支払義務のように、賃貸借契約から生じる賃借人固有の典型的な義務ではありませんが、前述した「用法」に関連した義務であることは否定できません。
そのため、この特約に違反してペットを飼育した場合は、賃貸借契約上の債務不履行があったとして、原則として、ペットの飼育をやめるように催告をしたうえで賃貸借契約の解除をすることができることになります。
解除が認められない場合
しかしながら、賃借人が当該特約に違反したからといって、必ずしも賃貸借契約の解除が認められるわけではありません。
判例の考え方によれば「賃貸人との信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない特段の事情」がある場合には、賃貸借契約の解除は認められないことになります。
すなわち、賃貸借契約は一定期間続く継続的契約であるため、当事者間(貸主と借主)に信頼関係があることが前提となり、たとえ賃借人に違反(債務不履行)があったとしても、依然として当事者間に一定の信頼関係が築かれているのならば、賃貸借契約を解除するには及ばない、ということになります。
この「特段の事情」の有無は、ペットの種類、数、飼育方法、期間、衛生状態、建物の種類、周囲に及ぼす影響等を総合的に評価して判断することになります。
ペットの飼育禁止特約がない場合
前述したとおり、賃借人は、賃貸借契約の内容やその目的物の性質によって定まる用法に従ってその物を使用収益する義務、「用法遵守義務」を負っています。
そのため、例え賃貸借契約の内容に当該特約がなかったとしても、様々な事情から、賃貸人と賃借人の間の信頼関係が破壊するに至ったと認められる場合には、用法遵守義務違反ないし信義則上の義務違反として賃貸借契約を解除されることもありえます。
実際にも、以下のとおり、ペットの飼育禁止特約がない場合において賃貸借契約の解除を認めた裁判例があります。
①賃借人が共同住宅に接続して鳩舎を設置して約100羽の鳩を飼育し、近隣住民から訴訟提起されたという事例
②居宅内で約10匹の猫を放し飼いにして室内を損傷・不衛生にしたほか、建物周囲に餌を置いたため、野良猫が常時建物近辺に集まっていたという事例
流山パーク司法書士事務所にご相談ください
今回記述したような特約違反や賃料滞納などを理由に、賃貸借契約を解除して建物の明け渡しを求める必要が出てくる場合があります。
当事務所では、そういった建物の賃貸借契約に係る様々な手続についてお手伝いをすることができます。
少しでもご心配な点があれば、まずは当事務所にご相談ください。当初のご相談は無料で時間制限なく行っていますのでお気軽にお問い合わせください。ご連絡お待ちしております。
以 上