書留郵便に付する送達(付郵便送達)の話

 今回は、裁判手続の中で行われる送達手続の一つ「書留郵便に付する送達(付郵便送達)」についてご紹介していきます。

司法書士 佐藤俊傑

送達手続とは

 訴訟などの裁判手続の中で、裁判所から当事者に関係書類を渡す方法の一つとして「送達」があります。

 送達は、被告に訴状副本を送るときや判決正本を送るときなど、一連の裁判手続の中で特に重要な場面や重要な書類を送る場合に利用されます。送達をすべき場合は民事訴訟法に個別に定められていますが、重要な書類なので必ず当事者に内容を了知させたいときに実施するよう規定されています。  

 なお、送達を受ける当事者のことを「受送達者」と言います。

特別送達

 いくつかある送達方法の中で、最も一般的なのは「特別送達」という方法で、郵便で当事者に書類を送る方法です。

 1通1000円以上の費用がかかる方法ですが、特別送達を実施した場合、後日、郵便局から裁判所に対し、「いつ、どこで、誰に」書類を渡したかを証明する文書が返還されてきますので、受領したことの証拠を残すことができます。

(補足)

 裁判所から当事者に郵便で書類を送る場合、特別送達ではなく、82円切手等を貼って普通の郵便物として送ることもあります。この場合、「送達(特別送達)する」場合と区別する意味で、実務では「送付する」とか「通知する」などという言い方をします。

受送達者が受領しない場合

 ところで、受送達者が故意に郵便物を受領しない場合があります。裁判所からの書類だからこそ受領しないという人もいます。

 特別送達は、書類を受領したことの証明書が残る点で優れていますが、受送達者が不在であったり受領拒否をして配達できなかった場合は、通常の書留郵便同様、一定期間、郵便局に保管(留置)され、その期間(=「留置期間」と言います。)経過後に裁判所に返還されてしまいます。

書留郵便に付する送達(=付郵便送達)

 裁判所からの郵便物を受領拒否した場合、多少の時間稼ぎにはなるかもしれませんが、郵便物を受領しなければ裁判手続が進まないのでは困りますので、最終的には必ず送達する方法が民事訴訟法の規定にあります。それが書留郵便に付する送達です。実務では省略して「付郵便(ふゆうびん)」と言います。

 付郵便は、原則として、裁判所から郵便物を発送した時点で送達が完了したことになります。
 すなわち、受領拒否をしても、当該郵便物はすでに受領したものとみなして手続が進行することになるのです。

付郵便の要件

 前述のとおり、付郵便は、受送達者が実際に郵便物を受領しなくても手続が進んでしまうため、受送達者の権利保護の要請から、付郵便を実施するためには一定の要件があります。基本的には以下の二つの点が重要です。

1受送達者が、付郵便をするその住所地に確実に居住していること

2受送達者の就業場所が不明であること

受送達者が、付郵便をするその住所地に確実に居住していること

 送達できない理由が、受送達者の不在や受領拒否ではなく、そもそもそこに居住していない場合(転居先不明など)は「公示送達」を利用して訴訟を進めていきますので、付郵便は実施できません。

 公示送達の手続については、コラム「被告が行方不明の場合の訴訟手続」を参照してください。

受送達者の就業場所が不明であること

 裁判所は、受送達者の就業場所に宛てて郵便を出すことができるので、就業場所も不明であることが付郵便の要件になります。普通に受領できる場所があるならば、強い効力のある付郵便は実施しないという考えによるものです。

調査報告

 さて、裁判所に付郵便を実施してもらうために、上記二つの事項の調査をして裁判所に報告することになります。

 1については、受送達者の最新の住民票を取得して確認することが第一歩ですが、居住の実態を確認する必要がありますので、その住所地に実際に行って調査確認する必要があるのが通常です。

 なお、現地調査事項については、裁判所によっては参考書式等を用意しているところもありますが、調査地が非常に遠方であったり、他人の郵便受けやライフラインの稼動状況を調べたり、近隣の人に聞き込みをしたりすることは、一般の方であれば少なからず負担になりうるところです。

 2については、当事者間の契約書や過去の取引から、相手の就業場所を知っていることもあり、そういった場合に在籍の調査をすることになります。

 そして、実際に付郵便を実施するか否かは、個別の事件ごとの裁判所(書記官)の判断ですので、何を提出すれば必ず認められるとか、この件は現地まで行かなくてもよい等は事前にはわかりません。個人情報の保護が重要視される昨今、こういった調査もなかなか難しくなっている気がします。

送達手続の重要性

 さっさと付郵便で手続を進めてしまいたいからといって、適当な調査報告をすることは避けるべきです。

 前述したように、送達は裁判手続の中で重要な局面で行われるものですので、後になって送達手続に何らかの瑕疵があることが見つかった場合、そこで裁判手続が停滞したり、場合によっては裁判手続全てがひっくり返る(やり直しになる)可能性も出てくるからです。

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以 上

合わせて債権回収建物明け渡し・滞納賃料回収の各ページもご覧ください。

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