債権執行手続における執行費用の回収
今回は、債権執行手続における執行費用の話です。なお、貸金の請求など「金銭の支払を求める」一般的な債権執行手続を前提にしています。
執行費用とは
「執行費用」とは、強制執行の準備のための費用(=執行準備費用)と、強制執行の実施のための費用(=執行実施費用)を含んだものです。
そもそも、強制執行手続は、債務者が債務の履行を任意に行わないため、法に従って強制的にこれを実現するものです。そのため、執行費用の最終的な負担者を債務者とすることはある意味当然のことだと言えます。
この点、民事執行法においても、「執行費用は債務者の負担とし、別途の債務名義を要さずに同時に取り立てることができる」と規定されています(民執法42条1項、2項参照)。
これは、請求債権と執行費用の合計額について同時に債権執行手続(債権差押え)ができるということを意味します。
執行費用の範囲
当然のことながら、強制執行をするためにかかった費用を何でも「執行費用」として計上できる訳ではありません。
あくまで、実際にかかった費用のうち、「民事訴訟費用等に関する法律」(以下「費用法」)第2条各号に掲げられている費目・範囲でのみ「執行費用」として認められることになります。
執行費用の請求の要否
ところで、この費用法という法律は、別表や費用法規則も合わせて参照する必要があるため、一般の方には少しわかりづらい法律だと思われます。
そのため、あれこれ考えるのが面倒ということであれば、執行費用は一切請求しない(=債権執行の申立書に記載しない)というのも一つの選択肢です。
一方で、執行費用は請求債権と比べると少額ですが、債務者に請求できるものは1円でも多く請求したいという考えも理解できます。
ここのところは、裁判所が必ず請求しなさいと指示するところではないので、最終的には債権者の方の判断によるところです。
一般的に請求できる執行費用
東京地裁の民事第21部(執行部)のホームページには、次のような記載例が紹介されています。(執行費用に関する部分のみ抜粋)
(債務名義が判決等の場合)
①本申立手数料 4000円
②本申立書作成及び提出費用 1000円
③差押命令正本送達費用 2898円
④資格証明書交付手数料 1200円
⑤送達証明書申請手数料 150円
⑥執行文付与申立手数料 300円
同ホームページには、他にも債務名義が支払督促の場合、公正証書の場合など複数の記載例があります。ただし、当事者の数や請求内容によって差異が出てくる費目もありますので、その点について以下で簡単に触れておきます。
①申立手数料
原則は、1件4000円です。ただし、債権者数、債務者数、又は債務名義の通数(=請求権の数)のいずれかが一つ増加するごとに4000円増加します。
②本申立書作成及び提出費用
これは定額です。
③差押命令正本送達費用
債権執行手続の中で必ずかかる送達費用(郵便費用)を計上したものです。通常は、申立て時に予納する郵便切手の額より少額になります。裁判所ごとに基準を定めており、また度々改訂されるので、その都度確認するのが無難です。
④資格証明書交付手数料
当事者(債権者、債務者、第三債務者)のいずれかが法人の場合、その資格証明書(商業登記事項証明書)を提出しなければならず、その取得費用を計上できます。記載例は1通600円を2名分計上していますが、具体的な事件ごとに差異が出てきます。
⑤送達証明書申請手数料
強制執行をするためには、債務名義の送達証明書が必要になるため、その取得費用を計上できます。1通につき150円になります。
なお、債務名義が公正証書の場合は、送達証明書1通につき250円です。
⑥執行文付与申立手数料
強制執行をするためには、債務名義に執行文を付与してもらう必要があるため,その申立費用を計上できます。1通につき300円になります。
なお、債務名義が公正証書の場合は、執行文1通につき1700円です。また、そもそも執行文が不要の債務名義もあります。
その他の執行費用
細かい話になりますが、登記事項証明書や送達証明書、執行文などの書面を発行してもらうと、前述の執行費用の他に、各書類の交付費用(=受領費用)として(何百円単位ですが、)執行費用として計上することができす。
裁判所の記載例にこの額が計上されていないのは、少額かつ煩雑になるためでしょう。
また、条件成就執行文の付与など特殊な手続が必要になった場合や、戸籍謄本など定形外の書類が必要になった場合なども、執行費用としてさらに上乗せできる費目があります。
ただ、先ほども述べたとおり、一般の方が逐一調べて執行費用を全て請求するということは相当程度難しいと思いますので、あとは費用対効果を考えて取捨選択すべきだと思います。
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以 上
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